TEACHER INTERVIEW

アートイラストコース講師 オカモトショーゾー インタビュー

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特集講師インタビュー第4弾は、アートイラストコースのオカモトショーゾー講師に、講師展出品作品の制作にまつわる話、特に3Dプリンターやデジタルワーク、ドローイングなどについて語っていただきました。

 講師展出品後、美術科をはじめいろいろなコースの方から興味を持っていただいてか、これは何を描いているのか、版画なのかそれとも手描きなのかというような、内容や制作行程について質問される事が少なからずありましたので、自分の描画や物作りの取組みについてこの場をお借りしてお話しさせていただこうと思います。

制作経緯

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 講師展は今年で5回目ですが、毎年参加しているものの、その間も見た目や制作方法は変化しています。5年前はそれ以前から続けていたアニメ絵的な油彩を出品していましたが、去年と今年の取組みとして3Dプリンターを何かしらどこかで使用してみようという企みが、制作においてひとつの契機になっています。

 こうした技術的な興味や環境の移ろいでビジュアル的に変化してきてる側面があると思います。しかし、このようなビジュアル的な一見多様性や対立的にも見えるような変化も、方法としてみればただ差異があるだけかもしれません。目を引きつけたり感じてもらえるところはそういったコンセプトとはまた別にあるのではないかと思っています。

 余談ですが、10代後半にマルセル・デュシャンに傾倒していた次期があり、コンセプチュアルアートにどっぷりとハマっておりました。今となってはアバンギャルドも大きな物語の喪失の一つかもしれませんが、自分の持ち前のひとつには違いありません。たとえばリチャード・プリンスなどもその延長であるものとして、未だに好きな作家のひとりです。 制作経緯に話を戻しますと、もともとこの作品は年賀状のイラストの流用です。といいますか、同時進行のものです。

インスピレーション

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 ハイヒールというこの装置の意味はあえて置いておいて、まずこれの制作があるわけですが、以前フィギュアの3Dモデリングの際にいくつかサンプルを制作していて、それをプリントアウトしようと思っていたのがひとつのきっかけです。

 そして今年の干支の申(モンキー)との融合という発想です。可愛いもの、ネコやウサギなどをデザインとして取り入れた靴はよく見かけますが、モンキーのハイヒールは見た事がありません。あまり商品になるようなものではないかもしれないので、これはやりようによってはおもしろいと思いました。できればモンキーの表情を可愛くないようにデザインにし、ハイヒール自体のデザインもしっかりしたものをといろいろと起しました・・が、後に、これらの思いつきはあまりにも浅略な企みだったと初めてわかることになります。

3Dプリンター

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 特に自分自身プロダクトデザインの現場にいる訳ではないのですが、この機械が少し扱えるようになってからは、何かに使い道はないかとどこかで機会をうかがってはいます。しかし、ホームユースクラスはまだまだお守りを要する機械で、TEDカンファレンスなどで紹介される最新の技術とはかなりのギャップを感じます。去年の講師展では凸版をプリントアウトし版画を刷るという、これもまた無謀な実験を行うもなかなか言う事を聞いてくれなくて、結果は散々なものとなりました。

 今回制作するものは履ける靴です。実際に履いて歩けるという事ではなく人の足にフィットするという事で、撮影の事を考慮してテンプレートとなる靴から寸法を割り出したうえでモデリングしてゆきます。出力に使用した3DプリンターはUP Plus2です。このプリンターはハード・ソフトともに定評があり、失敗も少なく安定した出力をしてくれます。

 UP Plus2のスペックの関係で靴全体を一気に作れないので、あらかじめデザインはいくつかのパーツに分解してプリントしました。プリント後はとりあえずテンプレートと合わせてみて、無理があるところは何度か修正します。全てのパーツが揃ったら結合です。後に写真合成をするので表面を磨いたり着色はしておらず、素のマテリアルのままなのです。

フォトグラフ

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 小学生の頃にミノルタの110カメラを手に入れてからカメラとは長い付き合いで、ポートレートを撮りだしてからはmamiya RZ67やFuji645を多く使用していました。写真が表現手段となり得ることがわかってからは写真と絵画、また立体という垣根はさらに低いものになりました。画家だけでなくフォトグラファーの作品から影響を受けることも多いです。

 今となっては写真から描画、描画の合成、写真や描画のエフェクト・フィルター処理など多くの制作行程に撮影・スキャニングが入っており、特に写真に関するデジタル処理は重要なツールとなっています。ベクター変換による幾何学的な処理も多用する事が多くなってきています。そんな風に写真とデジタル技術が親密になってからは、作品制作には欠かせないものとなってしまいました。世界中のサーバーに毎日膨大な量の画像がたまっていく現在、写真ももはやリモートで撮影されデータベースとして消費されるモノになったのかもしれません。それでも自作自演として撮影する意味とは何でしょうか?

 できたハイヒールはモデルさんに履いてもらって撮影するのですが、この段階で今回の浅略さに気がつくことになります。良いアングルがなかなか見つからないのです。それはどうもモンキーハイヒールのデザインにあるようです。靴をデザインする事は、いくら奇抜なものを単体でデザインしたとしても、それらが実際に履かれ動くところまで予見しないと成り立たないものなのです。靴のデザイナー初心者がまず超えるハードルでしょうか。ヒールは1足しか制作していないのでポジションを変え撮影し、反転して合成となります。今回は紙焼きでなくB2モノクロコピーとカラーコピーで出力しました。

ドローイング

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 カラーコピーのみでもそこそこ見れる状態ではあると思うものの、もう少し手間をかけてみようと思いドローイングとスタイライズ処理を施してみます。もしかしたら紙焼きならドローイングしなかったかもしれません。



 ドローイングとは何なのかの質問もよくされます。描き方なのか描画時間なのか、素材によるものか、また表出内容によるものなのか、小説なのか詩なのかなど、いろいろと話してみるものの不確定なこともあり、有機的なそういうカテゴリーがあるとお茶を濁したような返答になったりします。例えばゲオルグ・バゼリッツの絵は若い人たちならドローイングとして見るかもしれませんが、あのニューペインティングの時代にはニュードローイングとはけっして言わなかったでしょう。広い意味ではタブローからデッサンやパフォーマンスまで包括する便利な言葉かも知れません。

 今から30数年前、10mのロイズ国際銀行のロビー壁画を手伝わせてもらったことがありました。巨大立体アルミパネルへのドローイングは数名で行いましたが、自分の仕事は良いできばえのものではありませんでした。そのことはドローイングのストロークなどをより意識できた経験になっています。そして、自分の担当しているアートイラストコースでもこのドローイングは、イラストの基礎的なデッサン方法として重要なトレーニングだと捉えています。

 今回選択した画材はカラーインク、蜜蝋クレヨン、スプレー、グロスなどです。これをコピーの上から施してゆきます。水溶性のものが多いので水張りしておきます。油性のものにインクやアクリルグロスは乗りにくいのですが、そういうことはおかまい無しです。コピー用紙が湿っている段階でリトグラフの要領で油性で描画してみるという方法もありえます。あとは気の向くままのラクガキです。 アクリルグロスは表面にエンボスをつけるためのもので、何度か重ね塗りをしています。モノクロがデジタル処理したポスター、カラーの方が今回出品したドローイングを施した物です。
 

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 以上でだいたい自分の傾向や作品制作について説明したつもりです。あとで自分で読み返してみると、なにやら贋作制作の手順、あるいはAIで実現できそうなイラストの作成方法ようにも読めてきます(笑)

 チェンニーノ・チェンニーニの技法書片手に古典技法を、富士通FM-8でBASICを独学で学んでた時期は同じで、思えば今のような制作方法は、なるべくしてなったように思えます。これで少しでも作品について納得、あるいは興味を持っていただけたら幸いです。おつきあいいただきありがとうございました。

オカモトショーゾー プロフィール
オカモトショーゾー

Nordbrücke版画工房に従事し銅版画・リトグラフを制作。
1982年大阪靭ギャラリーにて個展。以降、個展や企画展をはじめグループ展に多数参加。
絵画造形教室を主催し、油彩や3DCG、ペーパークラフト、フィギュアなどを制作。
大阪市都市協会ギャラリーにて優秀賞受賞。
ペパクラデザイナーコンテストにて最優秀賞受賞。

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