プロットについて その③
マンガコースこんにちは。マンガコースです。今回も前回に引き続き、プロットについて書かせていただきたいと思います。今回はプロットの立て方についてです。ただ、ジャンルや長さ、作者自身の経験によってプロットの作り方はいろいろ変わってくると思います。ですので今回は、あまりお話作りに慣れていない方が、一般の商業誌に投稿する場合の短編(16~50ページまで)の読み切りを作ることを想定して考えてみたいと思います。
・まずは描きたいお話のボリュームを知りましょう
お話作りにまだ慣れていない方がプロットを書き出す時、アイデアを思い付いた途端、お話がラストまですんなりできている…ということは少ないと思います。だいたいの場合、そのマンガの一部である、キャラだったり設定だったり、またはお話のある一場面から思いつく…という感じではないでしょうか。そのどれから考えついても構わないのですが、その次にお話をイントロから丁寧に考えていくと、短編にしたいのに短いページ数ではまとまらなかった、短く終わらせることはできたけれど、何となくまとまりが悪かった…ということはないでしょうか?たくさんマンガを描いていけば、段々その辺りの調整もうまくできるようにはなるのですが、まだ数作描いた程度の頃は経験値が少ないため、上手くできないことが多いと思います。それは、普段皆さんが読まれるマンガのほとんどが長編だということが原因の一つに挙げられるのではないかと思います。普段目にしている作品を何となく頭に描いてお話作りをしてしまうため、余分なエピソードが増えすぎたり、色んな事を描こうとして散漫になったりすることが多いのです。ですので、まずは自分が描こうと思っている作品のページ数と同じ枚数のプロの読み切り作品(もちろん自分が描こうと思っているジャンルと同じものが良いです)をプロットに起こし直してみましょう。そうすれば、どれだけのボリュームなら描きたいページ数の中に納まるかが、実感していただけると思います。
・ラストから作ってみましょう
お話のボリュームについてはイメージできたとして、しかしエピソードを削ったり短くしたりしても、イマイチ話がまとまらない、終われない…ということは良くあります。その場合やってみてほしいのは、『ラストから話を作る』というやり方です。ラストといっても本当の結末はジャンルによってはだいたい決まってしまっているのでそこではなく、『一番盛り上がる転の部分(クライマックス)をどういうエピソードにするのか?』ということを、最初に決めてしまうということです。例えば少女マンガだと、ラストは『主人公と相手役が両想いになる』ということはほぼ決まっています。けれど、『どうやって両想いになったのかの決定打=転で起こる出来事』は、色んな出来事が起こる可能性があるわけです。そしてそこの部分のアイデアによって、お話の面白さ(意外性)が左右されます。けれど、前から順番にお話を作っていった場合、その決定打になかなかたどり着けず(もしくは思いつかず)、だらだらとしてしまいがちです。なので、キャラや設定が出来たら、まずはその部分のアイデアを作り、その流れに持っていくために直前で必要な出来事は何か?と、後ろから順番に前に向かって話を作っていきます。そうしていくと、最初の状態(まだ主人公の片思いor嫌っている状態)に戻っていく訳です。そうすれば、ラストまでの流れを作ることができます。そうして、ラストまでの大まかな流れが決まったら、そのお話の軸を捉え、今度は前から順に話を見直して、キャラ達にとって不自然な流れや動きではないか(作者の都合でキャラを動かしていないか)?物語に起伏はできているか?などをチェックして、手直しを加えていきます。この時あまり変えてしまうとどんどん流れが変わって、結局普通に前から作るのと変わらなくなってしまいます。ですので、出来ればプロットを立てる早い段階(一番最初だとなおいいです)で、キャラクターのビジュアル(第一稿)も決めておくと、よりイメージが固まりやすくなるので、変更も少なくできるのではないかと思います。もちろん考えていく中で、より面白くするためにキャラ変更をすること自体は構いません。最初のキャラに固執しすぎて話が動かなくなるよりは、考えたクライマックスをより生かせるキャラは何か?と意識したことによって変更していく方が良いので…。プロット段階ではまだ何も本決まりした部分はありませんので、臨機応変に流動的に作っていきましょう。
・何かの変化をつけましょう
もしキャラや設定から考えた場合、そもそもラストのイメージがわかない…ということもあります。その場合は、『イントロ(起)』の主人公の状況を、『結』では出来るだけ真逆に変化させてみましょう。このギャップが大きければ大きいほど、ストーリーにドラマを作りやすくなります。『犬猿の仲の二人が両想いになる』『弱小チームが強豪チームに勝つ』『人間不信だったが信頼できる友人が出来る』などなど…。変化させるのは、外的なものでも内的なものでも構いません。主人公に大きな変化が起きた部分を切り取ってマンガにすることで、ドラマが生まれやすくなります。もちろんジャンルによっては主人公自体に変化が起きない事もあります。最初と最後で変化しないことが逆に面白さを生み出すこともあるでしょう。なので、必ずどのお話でも『変化』が必要なわけではありませんが、例えば主人公が変化しなくてもその周りの関わった人達の中で何かが変わるとか、状況は変化していなくても主人公の気持ちの中では小さな変化が起こっているとか、変化を望んでいた主人公が最終的に変化しないことを逆に受け入れるようになった(変化しない事を良いことだと改めて思うようになった)とか、変わらない主人公を受け止める読者側の気持ちが最初と最後で変化しているとか、とにかく誰かの何かの変化は入っていた方が一般的な商業誌向けに描く作品としては、読者に馴染みやすいのではないかと思います。
・ストーリーをどこから始めるかを考えましょう
そしてここで気をつけたいのが、お話のボリュームについてです。先ほど、どれくらいのお話のボリュームならどれくらいの枚数になるかを何となく把握したので、自分が作ったお話とそれを比べて、全体のボリュームバランスが似ているかをチェックをします。短い場合は途中(承)のエピソードを増やせばいいのですが、たいていの場合は長くなっていると思います。この時途中のエピソードで不要な部分があればそれをしっかりそぎ落として行けるのが一番なのですが、そうすると流れが急すぎて不自然になってしまう…。そんな時、てっとり早くボリュームをたくさん減らすため、今は後ろから作っているので、出だしの部分から削っていくという手があります。お互い嫌いあっているところから始めると長くなるのであれば、主人公が相手を嫌いじゃなくなった(好きになった)きっかけのエピソードから始める…という感じです。それでもまだ長ければ、既に主人公は相手のことが好きだというところから始める…でもいいと思います。とにかく、収まるボリュームになりそうなところからお話を始めるというのも、短編としてまとめる一つの手法だと思って挑戦してみて下さい。
今回はざっくりとプロットの立て方について紹介させていただきました。もちろんエンターテイメント的に話自体を面白くするためには、さらに他にも気を付けた方が良いことはたくさんありますが、まずは『短編用のプロットを仕上げる』ことを目標として取り掛かることが大事だと思い、そのための考え方の簡単なアプローチを書いています。ただ初めにも書きましたが、プロットの作り方自体は人それぞれ色々ありますし、結果的に面白いものが出来ていれば途中経過がどうであれ、それでOKです。ですので今回の作り方は、煮詰まった時の一つのヒント、くらいのつもりで頭の片隅に入れておいていただければと思います。
たくさんのアイデアを出せるように、色んなものを見聞きして、自分の中の引き出しをどんどん増やして頑張ってみて下さいね!
井原 安子
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