デジタル作画のデメリット編

こんにちは。マンガコースです。ここ数年でマンガ制作ソフトの性能がとてもよくなったこともあり、今はネームからフルデジタルで、という方がかなり増えています。

実際教室に通う受講生の方の中でデジタル作画をされている方の割合もかなり増えています。アナログで作成されている方でも教室でデジタル作業をされている方を見ると気になるようで、デジタル作画に切り替えていく方も少なくありません。その時いろいろ質問をいただくので、今回はマンガの作画をデジタルにするメリットとデメリットについて書かせていただきたいと思います。

 前回はメリットを上げていきましたが、今回はデメリットを上げていきたいと思います。

★初期費用が高い

 アナログであればペンと紙さえあれば描くことができるので初期費用はとても安く済みますが、デジタルの場合マンガ制作ソフトの機能が良くなるに比例して、それをストレスなく動かすためにパソコンのスペックが高いもの(=価格が高いもの)が必要になってきます。またマウスのみで作業することは難しいため、ペンタブレットも必要になります。タブレットPCであっても、それで高機能のものを…となると、ペンタブレットが不要でも結局高額になってしまいます。さらに下描きやペン入れまでをアナログでする場合は、スキャナーも必要です。これらを最初にそろえようとすると、かなりの額になってしまいます。

しかもパソコンは一度買えばずっと使える…という訳ではありません。使っているうちにだんだん調子が悪くなり、3~4年程度で買い替えの時期もやってきます。運が悪ければもっと短い期間で故障してしまうこともあるでしょう。(もちろん運が良ければもっと長い間使えることもあります。)

また、パソコン本体を買い替えていけばOSも変わるので、そのうちペンタブやスキャナーなどの周辺機器が対応しなくなるかもしれません。環境を整えたり維持するためには、意外に高額な費用が必要なのです。

★ある程度パソコンの知識が必要

 普通にパソコンを使っていても急に調子が悪くなったり、動かなくなったりすることがあります。故障ではない場合でも、パソコンの知識が乏しければ対応することが出来ません。時間のある時は詳しい友人やサポートセンターに見てもらうことが出来ますが、締め切り間際などの場合、見てもらっている時間がない時もあります。そのような時、自分自身である程度対応できるスキルが必要です。

★データの不具合が起きることがある

 データは突然消えたり壊れたり、ソフトの不具合で突然作業中にシャットダウンしてしまうこともあります。そうなるとアナログと違って、それまでやっていた作業が全て0になってしまいます。マメにバックアップを取ったり、二重三重にデータを保存するなどしてしっかり対策を立てておく必要があります。またデータを長期保存する場合、その保存方法もきちんとしておく必要があります。

★眼精疲労が起きやすい

 アナログ作業の場合は肩こりや腰痛などが良く起きますが、デジタル作業はそれに加えて眼精疲労が起きやすいです。普通にモニターを長時間見るだけでも目に負担がかかりますが、絵を描くことでかなり集中して画面を凝視してしまうからかもしれません。個人差はありますが、モニターの光が苦手な方もおられ、中には長時間の作業が難しい…という場合もあります。モニターの設定変更やメガネなどを上手く活用する必要があります。

★少女漫画向けのトーンワークは少し苦手

 少女マンガの場合、ふわふわキラキラしたトーンをピンポイントで使ったり重ねたり、華やかな画面にするためのトーンワークがとても重要です。デジタルでももちろんそれは出来ますが、意外にそういう作業はアナログの方がずっとやりやすいです。また、そういう雰囲気を出すためのトーンで使い勝手のいいものが、デジタルの方ではまだ少し不足しているように感じます。デジタルでは自分で作ったトーンを使うこともできるので、自分の作風にあったトーンを自作することも必要になるかもしれません。

★多様なトーン削りが苦手

 普通に削るのであればデジタルだと簡単に出来るのですが、アナログでカッターを自由に微調整して駆使した削り方をされている方には、それをそのままデジタルで再現することは難しいでしょう。自分のやりたい削り方に近いブラシを探したり何種類も作ったりする必要があります。ちょっとした削りであれば、アナログの方が簡単に出来ることもあります。

★細かいところまで描き込めすぎてしまう

 細かく描けるのはデジタルのメリットではあるのですが、デメリットでもあります。拡大すればアナログでは無理なサイズの絵でもいくらでも描き込めるので頑張りすぎてしまい、元のサイズに戻すととても小さくなって頑張った部分が全く見えない…ということもよくあることです。最終媒体でのサイズを意識して、それに合った描き込みを出来るようになる必要があります。

★やり直し過ぎてしまう

 アナログだとある程度やり直すと、それ以上は直せない(紙がぼろぼろになっていたり、ホワイトがのり過ぎていたり…)ところまで来てしまったら、諦めることが出来ます。けれどデジタルだといくらでも描き直せてしまうので際限がありません。締め切りを作るなどして、ある程度直すことに制限をかける必要があります。

★トーンを貼りすぎてしまう

 たくさんトーンを使うことができ、かつ細かく貼れることで色んな場所に貼ってしまい、最終的にページ全体がグレーになってしまった…というのも、デジタルに慣れていない頃にはよくあります。自分が作りたい画面をしっかりイメージして、どれくらいのトーンを貼ればいいのかを考えながら貼っていく必要があります。

★モニターだと良く見えることがある

 これは人によりますが、モニターで見るといい感じの画面なのに、紙に印刷されるとそうでもない…ということがあります。デジタルだと紙が必要ないと思われる方もあるかとは思いますが、出来れば仕上がったら一度印刷して、紙で見た時の印象を確認しておきましょう。

★アシスタントで現場の雰囲気を味わうことができない

 デジタルアシは遠方でも出来るというメリットがある半面、プロの技術を間近で見ることが出来ません。オンライン上でつながって話をしながら作業をすることはもちろんありますし、デジタル作業のノウハウは学べます。ですがやはりプロの制作現場の雰囲気はその場に行かなければ伝わらないものがあります。そうして肌で感じることは、漫画家志望でアシスタントをされる方には大事ではないかと思います。  他にもデメリットはあるかと思いますが、主なものはこんなところでしょうか。

 

 

 

 

アナログでもデジタルでも、結局はどれもマンガを描くためのツールの一つにすぎません。どちらの手段の方がより良い・悪いはありません。作風や人それぞれです。自分が表現したい、描きたいマンガにはどちらのツールが向いているのか、どの作業でなら自分が楽しんで作品を作っていくことができるのか、ご自身の生活スタイルに合うものはどれか、色々複合的に考えてみてはいかがでしょうか?

 

 

井原 安子

ihara2014
Profile
同志社 大学経済学部卒業
大学在学中 マンガ家デビュー
現在はフリーのマンガ家として雑誌掲載
コミックス発行などで活躍中
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マンガを描く上で、「やる気」はとても大切な要素です。
一人では持続させるのが難しくても、
描く意欲を持った仲間と一緒なら、きっと頑張れるはず!
描く本人自身 も楽しみながら、一緒に学んでいきましょう!
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