絵本づくりの考察 4.「文字の表情」
絵本と表現コース原画が仕上がり、最後のDTP(デスクトップパブリッシング/卓上出版)作業の際に、文字のあつかいに悩む場合があります。基本的に書籍の文字は、同じ大きさ書体で読みやすく表示しています。が、絵本は絵以外に文字の表示方法でも、視覚的にも訴える事が効果的にできる媒体です。
DTPで使う文字デザインはフォントと呼ばれ、癖の無い基本的な書体には下のような明朝体とゴシック体の2種類があります。いろんな人に正確な情報を伝えるには、癖の無いシンプルで表情が少ない方が読者は絵本の世界に入りやすいのです。
ただし、文字だけの書籍とは違い、絵本の場合は見開いた画面全体の見え方からメッセージを受け取ります。ゆるい世界観の絵に丸文字などを使用すると、画面には一体感があるが、その画面は必要以上甘すぎ、締まりがなかったりする場合もあります。どんな場合も思いつきだけで決めるのではなく、ゆっくり考える必要があります。
また「ブツブツ」や「きゃー」等の擬音は、本文中に台詞としてカギカッコで表示することもありますが、キャラクターの付近に配置し、そのキャラクターに合った表情の有るフォント(手描き風、アンティーク調、丸文字などネットの中を少し探すだけで沢山の遊びのあるフォントに出会えます)を使い、本文とは変える事でキャラクターが発するイメージがよりよく伝わります。
そしてフォントを変えるだけではなく、文字を絵で描く方法もあります。絵本全体の構成上、盛り上がるページを強調し表情をつけたい場合や、起承転結の「転」の場面や、音をイメージとして描く場合などは描き文字にして伝える場合があります。一冊の絵本全体の構成を考え「ここだ!」という場面で使うと、より効果的に文章内容やイメージを伝える事が出来ます。
(例えば、以下は中田が絵を描いた仕事見本です。)
▲ポプラ社「ぷぅ」作:舟崎克彦 絵:中田弘司
それだけではありません、必要ならば絵の中に文字を入れても大丈夫です。この場合は文字内容をしっかりと伝えながら絵として表現します。音読した時に読みやすい事が効果的です。
▲愛知県教育振興会 あいち★どくしょタイムぶんこ「夜のどうぶつ園」作:もりゆうこ 絵:中田弘司
最後に「読みかせ」という側面が絵本にはあります。家庭でお母さんが、保育所で先生が、施設でボランティアさん達が読み聞かせをします。小さな人たちは文字を読めませんが、読み聞かせを聞きながら、それぞれの環境を堪能し、絵と一緒に文字の表情も見ています。それぞれの環境をイメージして、文字の表情でも楽しませる事が出来るかどうかを考える事も、表現の大切な要素の一つです。
絵本づくりの考察 1.「起承転結」の記事は、コチラをクリックしてくださいね
絵本づくりの考察 2.「擬人化」の記事は、コチラをクリックしてくださいね
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絵本コース講師 中田弘司
中田 弘司
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