風が吹けば桶屋が儲かる 無水エタノール・酒精・absolute ethanol・C2H6O
美術・絵画コース巷では例の肺炎ウィルスの影響が色々なところで出ているようです。大阪の街を歩いていても八割がたの人がマスクをしています。私自身も冬場は空気が乾燥して咳込みやすくなるので普段から外出時にはマスクは欠かせません。ここ最近は外出後、普段よりも念入りにうがいや手洗いなどを行なってから、この無水エタノールを水で薄めたもので手指を除菌してます。
この無水エタノールはその名の通り水分をほぼ含まない99.5%のエタノールで、ドラッグストアなどで売っています。色々なドラッグストアを回って最安値の店をさがしていますが一本1,100円くらいから1,600円くらいです。
手指の除菌の他にも様々な用途がありまして、絵画作品を制作する上でもいろんなことに役立ちます。
油脂を溶かす性質があるので道具類の洗浄にも使えます。
金箔を取り扱うための道具は手指の脂分が付着していると金箔がそこにくっついてしまうので無水エタノールで拭き取ります。
膠やテンペラメディウムなど、腐敗しやすい材料を保存しておく容器を除菌します。
シェラック樹脂(ラック貝殻虫の雌虫が分泌する動物性樹脂)を無水エタノールで溶解してシェラックワニスを作ります。シェラックワニスはテンペラ画が完成した後、画面を保護する為に塗布します。
作品制作以外にも機械類の掃除やちょっとした傷の消毒などいろんなことに使っています。シールやテープなどをはがした後の糊材も綺麗に落ちます。
このように様々な用途で使用される無水エタノールなので、普通の画材以上に消費する量が多いのですが今回のことでドラッグストアでも品薄状態のようです。今のところ2本程買い置きがありますが、何かと便利なこの無水エタノールが手に入らないようになるとちょっと困りますね。
十数年前、アメリカで狂牛病が流行した際に、油画の下地に使うウサギ膠が品薄になりました。動物が原料になる物品であるということで、ウサギ膠が海外から輸入されるときの基準が厳しくなったからだということでした。 当時、大学の助手をしていまして、下地実習の授業の準備のためにウサギ膠が大量に必要だったのでいろんな画材店に電話をかけまくって在庫分のウサギ膠を必死でかき集めたものでした。
遠い異国の地で起こった出来事が色々なところに派生して、一見無関係ないような我々のささやかな絵画制作にまで影響を及ぼしてくるものなんだなあと感じます。
早いことこの一件が収束してもらわんと困りますね。
松田 一聡
- Profile
- ‘01 東京藝術大学大学院油画技法材料研究室修了
‘12 「重力」展(Gallery Suchi)
‘13 アートフェア東京 2013(Gallery Suchi ブース)
‘14 「重力」展(Gallery Suchi)
‘15 「重力」展(Gallery Suchi)
「写実って何だろう?」(ホキ美術館) - Message
- 絵画を学ぶにあたって、1つのことに集中することも大切ですが、
いろいろな表現に挑戦することで得られるものもあると思います。 - ArtWorks