「判型(はんがた、はんけい)」とは本の寸法のうち、厚みを除いた辺(縦と横)の長さの規格、用紙サイズの事です。
一般的な書籍のサイズはB5やA4などが多いですが、絵本はA判やB判の規格サイズよりも天地が短い比率の場合が多いようです。
またブルーナのミッフィーちゃんのシリーズ「うさこちゃんとどうぶつえん(福音館書店)」は、正方形で仕上げ、デザイン的にも「かわいさ」を表現されています。
そして、絵の内容と画面サイズの縦横比の関係については、絵画のキャンバスのサイズを見ると面白いです。
例えば10号キャンバスの場合、長辺は53㎝です。
それに対して短辺はF・P・M・Sの4種類あり、それぞれ長さがF10号=53×45.5㎝、P10号=53×41㎝、M10号=53×33.3㎝、S10号=53×53㎝と違っています。
記号のF(Figure/人物)、P(Paysage/風景)、M(Marine/海景)、S(Square/正方形)には、それぞれの意味があり、人物、風景、海景を描くときに、美しく描くことが出来る比率として、描く内容に合わせてサイズが分かれているそうです。
同じように、絵本の大きさや画面の縦横比も、内容に合わせて変えている場合や、あるいはサイズに合わせて描く内容が決まってくる場合があります。
この絵本のサイズについては、福音館書店を発足させ「こどものとも」などを手掛けた、児童文学者で編集者の松居直(まついただし)著「絵本のよろこび(NHK出版)」では、『私が「こどものとも」で絵本づくりに行き詰まりを感じて、思いきってB5横型にしたのは、絵巻がいつも頭の中にあったことも一因です。』とも書かれています。
例えば、そのB5横型の絵本、
「エンソくんきしゃにのる(スズキコージ さく・え/こどものとも 福音館書店)」
開くと横長になり、まさに絵巻物のイメージですが、絵本の内容の機関車の長さや空間の広さを表現するのに適しています。
同じくB5サイズでも、縦長に使い横型の絵本と同じ短辺を折り位置にし、カレンダーのように上にページをめくる珍しい方法で仕上げられた、
「へそもち(渡辺茂男 さく/赤羽末吉 え/こどものとも年中向き 福音館書店)」
こちらは、雲の上の「かみなり」と地上の人々とのやりとりが、掛け軸のようなイメージの縦長の空間に生かされています。
こんなふうに仕上がりサイズと、描かれる内容は互いに影響し合い、読者はそこからもイメージをひろげます。
最後に公募の場合は、仕上がりサイズの指定のある場合もありますが、最大の大きさだけが規定されているが、判型は自由な事も多いです。
画面の大きさや、縦長、横長、正方形などは、絵本の内容を効果的に伝える機能がありますから、安易にサイズは決めてしまわずに、どうすれば内容がより伝わるかをコントロールする事も、より良い作品づくりに繋がります。
絵本コース講師/中田弘司
絵本づくりの考察(各記事は、下記をクリックしてくださいね)
中田 弘司