マンガコース 作画技術訓練課題「色々な角度の顔」

こんにちは。マンガコースです。当コースでは複数の課題を用意しており、ある程度の順番はありますが、受講される方のレベルや要望に合わせて組み合わせを自由に変更できるようにしています。とは言え、課題名だけ見ても「具体的にはどんなことをするのか?」「この課題の目的は何か?」ということは、分かりにくいかもしれません。体験入学をしていただいた方にはその時に簡単には説明させていただくのですが、初めての場所に来て色々な説明を一度に聞いて覚えておく事は難しいかと思います。ですので、こちらで簡単にそれぞれの課題について解説していこうと思います。
今回は、いよいよマンガらしい課題の登場です!「色々な角度の顔」という課題です。

文字通り、一人のキャラクターの顔を色々な角度から描いてみるという課題です。マンガでは、キャラクターはその時々で、色々な角度から捉えて描く必要があります。単純にカメラアングル的な理由もありますし、登場人物の感情や雰囲気を強調するため(悲しい時にうつむかせたり、偉そうに見せるためにアゴを上げさせたり)でもあります。ジャンルによってはそれほど色々な角度から描く必要がない場合もありますが、描けないから描かないよりも、描けるけど描かないという方がよいので、挑戦してもらっています。
この課題に取り組む前に、もし『自分の絵柄がまだ決まってない』という方の場合は、先に絵柄作りをして、顔のパーツをどんなデザインにするかを仮決定してもらいます。絵柄自体はどんどん変わっていくものなので、最初に決めた絵柄に固執する必要はありません。ただパーツの置き方の基本はある程度決まっているので、それを覚えることが大事です。
今回作画例でご協力いただいた受講生の方は元々の絵柄が既に決まっている方だったので、一番自分が描きやすい&描いていて飽きないキャラで描いていただきました。…余談ですが、なんとこれを描いておられる方は日本の方ではありません!日本に短期的に滞在しておられて、その間に集中的にマンガコースで受講をされている方です。日本のマンガやアニメは海外に多く進出しているので、そこで興味を持たれて独学でマンガ的な絵を描かれていたそうです。

…話を戻しまして、まずは上も下も向いていない場合。

正面でも斜めでも、きちんと同じ顔に描けておられますね。一般的には利き手と同じ向きの顔を描くのを苦手とする方が多いので、描けない場合は教室では描きやすい方の向きの横顔を描いてもらっています。左右自在に描けることはもちろん大事ですが、マンガの場合は二倍の手間はかかりますが、最悪裏に描いてトレース…という手段も取れるので…。無理に描けない向きを崩れたまま描いて変にくせがつくよりは、まずは描きやすい向きで正しい形を覚えてもらう方が良いかなと思います。そして正しい形が手に馴染んできてから、描きにくい反対方向の向きを練習してもらった方が、最終的にはキレイな形で描けるようになる方が多いです。
少し話がそれましたが…。顔の向きが変わってもパーツのデザインをそろえるのは基本として、もう一つのポイントとしては目鼻口の位置が大事になります。そこがずれると別人、もしくは年齢が変わって見えてしまうからです。ただ、描いたご本人が自分の絵を見ても、そのズレをどうすれば直せるのかを判断するのは難しいことが多いようです。ですので、講師の方から、下描きの段階でそのズレを解消するためのアドバイスを細かく行います。また、下書きで終わらず最後まで仕上げていただくのは、ペン入れやトーンに慣れていない方も多いので、トーン貼りまで仕上げていただくことで、使い慣れない画材に慣れていってもらうという目的もあります。(特にこの方は海外の方ですので、さすがに向こうではマンガの画材は簡単に手に入らなかったようで、こちらの教室に来られてから、ペンやトーンに触れてもらっています。そして「ペン慣れをしたい!!」ということもあり、たくさんカケアミを頑張って下さいました♪)

次は上向きの顔です。

普通の角度から見た時と比べ、顔の中身のパーツは上側に寄せ、逆に耳は下に下ろし、目と耳と位置がそろわないようにすることで、かなり上向きに見せることが出来ます。ただし、単純にパーツを移動させただけでは違和感の残る絵になります。顔は凹凸があるので、特に鼻のパーツが前に出ていることを意識して描く形を変えなければなりません。そして変えたとしても、普通の角度から見たキャラと大きくズレないようにする必要もあります。ここの微調整は、描かれる絵柄がリアル寄りかデフォルメがきつめか、正しい形には描けていてもマンガのキャラとしてかっこよく・可愛く見えないのであれば(特にあごの処理ですね)どうアレンジすればよいのか…などなど、絵柄によってそれぞれ変わってきますので、講師の方で個人個人に合わせてアドバイスさせてもらっています。今回の作画例の場合は、肉感的な立体感をキャラの顔に持たせていますので、特に頬と鼻の丸み感をしっかり出すことで、上向き感を出すことに成功しています。

最後に下向きの顔です。

実は下向きの顔、特に正面は一番難しいのではないかと思います。上向きと同じく顔のパーツを寄せたり、目と耳の位置を変えたりしただけでは不自然で、それに加えて、かなり顔のパーツの形それぞれを変えていく必要があります。また、下を向くことで頭頂部がしっかり見えるので、髪のマンガ的な毛流れや毛束も意識する必要があります。普段キャラを描く時にそこを意識していない方は、そこでかなり苦戦します。今回は、元々の絵柄があまり髪の毛の線を細かく入れるタイプではなかったのですが、ツヤベタを入れることで、髪の分け目や毛流れを立体的に表現することが出来ました。ちなみに、髪の毛の毛流れや束を下向き以外の時でも意識して描くようにしておくと、カラーイラストの時にとても役に立ちますよ♪
あとは肩の位置も注意です。下を向くときは自然に首も前に傾くことが多いです。そうなると肩の見え方も変わってきます。フカンの絵ではないので、それほど肩の厚みを意識する必要はありませんが、それでも他の向きの顔よりは立体感を意識する必要が出てきます。また、これも単純にリアルに描けば良いという訳ではないので、マンガ的な絵柄の良さを残しながらの調整を行ってもらいます。

この課題だけで同じ顔を何度も描くのは大変!と思われる方もあるかと思いますが、マンガは同じ顔をたくさん描く必要があります。絵柄が不安定な時期はどうしてもコマごとで微妙に変わっていくのは仕方がありませんが、それでも同じ顔に見えるようにするためにはどこに気をつければいいのかを、今回のように色々な角度の顔を描くことで掴んでいってもらうこともこの課題の目的の一つです。けっこう地味に大変な課題ではありますが、コツをつかめれば後々作画がとても楽になりますよ♪

さて、少し話は変わりまして。
今回の作画例にご協力いただいた方が海外の方だと少し触れていますが、実はマンガコースでは、今までも何人も海外の方が通われていました。アジア圏の方がやはり多いですが、それ以外の国の方もおられます。普段は、クールジャパンと聞いてもあまりピンとこないのですが、こんなふうにマンガやアニメから日本に興味を持って、『実際に本場の日本で勉強しよう!』と思ってアートスクールを訪れる方達にお会いすると、グローバル化をとても実感します。そして違う文化圏の方なのに、同じマンガやアニメの話題で受講生同士で話が盛り上がったりすると、本当にすごく嬉しいです♪もちろん、マンガコースだけでなく、他コースでも海外の方は学ばれていますよ!

なんだか今回は違う話題も入ってしまって長くなってしまいました…。また次回も引き続きよろしくお願いします。

井原 安子

ihara2014
Profile
同志社 大学経済学部卒業
大学在学中 マンガ家デビュー
現在はフリーのマンガ家として雑誌掲載
コミックス発行などで活躍中
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マンガを描く上で、「やる気」はとても大切な要素です。
一人では持続させるのが難しくても、描く意欲を持った仲間と一緒なら、きっと頑張れるはず!
描く本人自身 も楽しみながら、一緒に学んでいきましょう!
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