版画のコラグラフという技法と作品について

2021年に「雨のささやき(Wisper of Rain)」という版画コラグラフによる作品を作りました。





雨のささやき 10×10

 

コラグラフはコラージュという技法をベースにしているところから名前がついたと聞いています。基底材(金属や木や樹脂や紙)の上に紙や自然物(葉っぱや種)を接着して(これをコラージュといいます)
凸凹を作ったものを版にして版画作品にするという技法がコラグラフです。「雨のささやき」の版は、ボール紙にモデリングペーストを塗って三角の形をスクレパーの先で描いたものです。
思い付きのまま描いたので、版は10分ほどでできました。モデリングペーストの塗りむらが微妙な味を作っています。作品と一緒に版を見せますとあまりにも単純な版なのでびっくりされます。





ボール紙にモデリングペーストの版

 

この版にローラーで色をのせて、紙にプレス機で刷り取ります。プレス機がないと作品ができないのがこの技法を困難にさせていますが、比較的簡単にできる楽しい技法であることは間違いありません。
適当に作った版が、思ってもみない素晴らしい作品を作ることがあります。
この一つの版を使って、3回刷ることで作品が出来上がっています。
これを一版三色刷りとい言い方をします。
私は同じ版を使って何度も色を変えて刷ることが多くありますが、私の刷り方は、銅版画をしている人からすれば、なんと邪道なことをしているのだ、ということになると思います。
私は、作品作りは好きにすればいいのだと思います。

 

例えば、紙を湿すことをしていません。
通常、銅版画は紙を湿して版のインクを取りやすくします。
コラグラフも同じように紙を湿して刷り取る方法もあり、そうされる作家のほうが多いと思います。
凹版にインクを詰めて不要なインクを寒冷紗でふき取ってプレスに通すのが一般的ですが、私は凸部にインクを置いてそれを刷り取ります。
要は木版画のような刷り取り方になります。
インクをゴムローラーでのせるのですが、このローラー幅によっても色ののりが違ってきます。
小さい幅のゴムローラーを使うと版にきれいの乗りますのでしっかりしたプリントになります。
少し幅の広いものを利用すると版の凹凸を拾いやすくなりますので、私は少し幅のあるものを利用するのがいいと思っています。
大きな幅のゴムローラーは歪みによって真ん中にかかる力が弱くなるためだと思います。
またゴムの硬度によって版のインクののりが違ってきます。今回の作品はやわらかめのゴムローラーを使いました。

 

刷る際は、プレス機の上に版を置き、その上に刷り取る紙を置いて版画ローラーで刷り取りますが、私は逆にプレス機のヘッドプレートに紙を置き、その上に版を下向きに置いて刷ります。銅版画と違ってプレートマークがありませんし版を重ねるときも見当を作っておく必要がないから楽ちんです。

紙を湿さない理由は、紙の伸び縮みで版ずれが起こるのを避けるためです。
紙も版画で一般に使うような紙でありません、今回はキュリアス215㎏を使いました。
紙屋さんが残った切れ端をビックリするような安価で譲ってもらった紙です。
キュリアスは、金属を思わせるような、輝きときらめきが華やかな両面パール紙で、美しい色と質感で印刷効果も高く、パッケージや紙製品に高級感を演出しますと紙屋さんのHPに記載されていますので、印刷によく利用される紙です。

版画に使われていることは聞いたことはありません。

アルシュなど高級紙を使うこともいいとは思いますが、小さな作品にはこのような紙を使うのも楽しいものです。版は凹凸も比較的大きいのでヘイター法を試みるのも面白いですし実際にその技法で刷った作品もあります。
この時は紙を湿します。


インクは銅版画用を利用したりリトグラフ用を使うこともありますが、油絵具を利用することもあります。
しかし、乾燥の早いアクリル絵具を使うことは難しいですし、版が乾燥した絵具で壊れてしまします。
手の早い人は、使うことができるかもしれません。


まあ、いろいろ試してみるのが自分独自の技法を構築する近道だと思います。

今回の「雨のささやき」には油絵具を使いました。

版画に油絵具を使う人もあまりいないと思います。おそらく、油絵具に使っている油が紙に良い影響を与えないからでしょうが、あまりそれにこだわっていません。
一版目の刷りはクサカベのターコイズブルーを使いました。
十分乾燥させたうえで、二版目は同じメーカーのオリエンタルブルーを使いました。
一度別のメーカーのオリエンタルブルーを使いましたがイメージとはかけ離れたものになりましたので、同じ名称の絵具であっても使ってみて選ぶべきです。
私は、今回はクサカベでしたが、マツダの絵具を使うことが多いように思いますがメーカーで決めているのではなく、あくまでこの色にはこの絵具が好きということで使います。
黒いところは、紙をこの形に切り抜いて、これをマスキングに利用してローラーで色を部分的にのせています。
この黒は、ピーチブラックとセピア、マゼンタを混色して作っています。
微妙な色合いは混色からと塗り重ねから作品作りをしています。



 

 

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