絵本づくりの考察 12.「構図」
絵本と表現コース絵本制作において、作画時は物語・作品の内容に合わせて描くべき要素をただ置く
のではなく、よりよく見えるように「※構図」を考えることも必要です。
絵本やイラストの「構図」には昔から色々な方法、考え方があります。
構図を意識した表現方法には、次のようなものがあります。
◆まず有名な美しいバランスの「黄金比」
銀河系の渦の比率から、オウムガイの渦巻き、人体の比率など自然界の全ては、このバランスで成り立っているといわれ「美の基準」とも呼ばれています。
この比率の近似値では「1:1.618」、「5:8」となり、この比率を利用した構図は絵画にもたくさんあり、パルテノン神殿から名刺やハガキまで利用されています。
◆写真を撮る時の基本の基本「三分割法」
カメラのファインダーを覗くと縦横とも三分割した線が見えるタイプもあるように、バランスよく構図を決める方法です。画面の中に大切な主役と脇役を決め、構図に明確な差を生む方法です。
◆主役がドーンとある「日の丸」の構図
モチーフをセンターに配置する構図、あまり考えなくても安定感は抜群です。意識せずに絵を描き始めると、キャラクターが生きるこのパターンになってしまうことが多いです。一枚ならば良いのですが、展示会などで作品を並べて見ると、全体がどうしても同じイメージなってしまうのが弱点です。
◆三角形を意識して、奥行きや安定感を出す「三角構図」
三角構図とは、三角形の頂点に要素を置いたり、画面の中に三角形の線ができるようにする構図です。三角形は必ずしも正三角形である必要はなく、変形させたり、逆三角形にしても大丈夫。逆三角形にすると上にボリュームが生まれ不安定になりますが、動きが出てきます。
例えば、下のイラストは中田が描いた「ベネッセコーポレーション」様の書籍で使用している、桃太郎と鬼の戦いのシーンです。
この見開きページは動きのある場面を目的としているので、犬、サル、キジの3匹を逆三角形のそれぞれの角に配置する構図を利用しています。
ただ、これらは一枚絵の制作に特化した考え方です。
もちろん絵本の場合も見開きの絵を一枚絵として考えれば同じようにすれば良いのですが、絵本の場合は見開きの一枚絵のように画面内のバランスだけではなく、全体のページの流れの中での役目もあります。
絵本は、連続するページをめくってストーリーや内容を理解するので、より具体的に効果的に伝えるための構図も意識します。
例えば、下図のように目的やページの流れに合わせると、構図についていろんな考え方ができます。
これらは絵本ならではの構図を考える時の注意点です。
絵本はページをめくる方向に新しいストーリー(未来)が続きます。横書きの場合の文字は左から右へ流れるので、向かって右側に新しい世界があり、登場人物はその進行方向に沿うと時間の経過になじみやすくなります。 また反対を向くと、帰ってくるイメージになるので、お話の内容によって主人公の顔や体の向きを反対に変える必要があります。
そして絵本の文章が縦書きと横書きでは、ページをめくる方向が変わるので、進行方向も逆になります。
描きやすい顔の向きもあると思いますが、絵本の原画はそういう注意も必要になります。
絵本と表現コース講師/中田弘司
「※構図」とは、
人物や木・建物、・背景などのさまざまな要素をバランスを考えて配置し、絵や画面などを構成することです。同じ要素でもその配置や大きさ、色や明度を変えることに
より躍動感・静寂さなど、印象が大きく変わります。
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上図は、アートスクール通信講座「絵本づくりコース」のテキストで使用している図です。
通信講座では「絵本づくり」のみに特化したコースもございますので
詳しくは下記アドレスより、紹介ページをご覧ください。
https://art-tsusin.com/course/picturebook/
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絵本づくりの考察(各記事は、下記をクリックしてくださいね)
- 1.「起承転結」
- 2.「擬人化」
- 3.「シンプル」
- 4.「文字の表情」
- 5.「普遍性」
- 6.「目的」
- 7.「序破急(じょ・は・きゅう)」
- 8.「キャラクター」
- 9.「オノマトペ」
- 10.「判型」
- 11.「タイトル」
中田 弘司