皆さまこんにちわ。
アートスクール大阪デッサン基礎コース講師の安田です。
絵画やスケッチの世界には、さまざまな手法と表現方法が存在します。
美術初心者の方は、これらの用語を混同することがよくあります。特に、デッサンとドローイング、クロッキーとスケッチという言葉はしばしば混同されて使用されますが、実際にはそれぞれに異なる意味と特徴があります。
本記事では、デッサンとドローイング、クロッキーとスケッチの違いについて詳しく解説します。
それぞれの手法の独自性と使い分けるべきコンテキストを理解することで、各々の手法を活かし適切な表現をすることが可能になります。
このように、デッサン・ドローイング・クロッキー・スケッチは絵画美術の基礎であるだけではなく、あらゆる業界で必要とされるスキルになります。それぞれの特性と理解を深め、スキルを習得することで、様々な可能性が広がります。
まずはデッサンとドローイングについて解説します。
1.デッサンとドローイング、どう違うの?
(1)デッサンの特徴
デッサンは、鉛筆やチャコール、木炭、インク、ペンなどの道具を使用して描きます。
フランス語でデッサン(dessin)を日本語では素描、英語ではドローイング(drawing)といい、人物・生物・風景などその形や輪郭を正確に写し取ったり、明暗や遠近を利用して立体的に描きます。時間をかけて対象を観察し、徹頭徹尾対象の様相に迫ります。
「人物デッサン」「石膏デッサン」「静物デッサン」など。
①観察と再現
デッサンは、観察した被写体やイメージを細部まで正確に再現することを目指します。
形状や比例、光と影の表現など、現実の物体やシーンの要素を忠実に描写します。
②線とトーン
線やトーンを使用して形や質感を表現します。
細い線や太い線、ハッチングやクロスハッチングといった線の技法を使って、被写体の輪郭やディテールを描き出します。また、シェーディング(陰影)やトーンの変化を用いて、光と陰の表現を行います。
③デッサンの手順
〇下絵の作成
最初に、被写体の構造や形状を正確に捉えるために下絵を作成します。軽い線や形状のガイドラインを使って、全体の配置や比例を決めます。
〇輪郭の描写
次に、被写体の外形や輪郭を描きます。正確な輪郭を描くことで、被写体の形をよりリアルに再現することができます。
〇ディテールの追加
基本的な形状が描かれたら、細部のディテールを追加します。
テクスチャやパターン、細かな特徴など、被写体の個々の要素を注意深く描写します。
〇シェーディングとトーンの追加
光と陰の表現や立体感を付けるために、シェーディングを行います。
ハッチングやクロスハッチングといった技法を使って、トーンやグラデーションを表現します。
〇修正と仕上げ
最後に、描画の修正や微調整を行います。
必要に応じて消しゴムや修正液を使い細部を整え、背景や周囲の要素を追加して作品を完成させます。
(2)ドローイングの特徴
一般的にはドローイング(Drawing)は、「線を引く」意味で、大きくデッサン・クロッキー・スケッチを含めた総称として使われます。線やトーン、色などを使って絵や図を描く行為や技法のことで、造形の分野では、現実をそのまま描く「デッサン」と違い、描く人の個性や意図・手法に基づき、瞬間的に筆を動かし短時間で完成させます。
即興性が強く、個性が直截に画面に現われます。
デッサンもドローイングの一形態として含むと考えられていますが、ドローイングはより広範な表現方法を指す場合もあります。
①表現の多様性
ドローイングは、線やトーン、色などの要素を使って表現するため、多様なスタイルや技法を取り入れ表現することができます。写実的な描写から抽象的な表現まで、幅広いアプローチが可能な技法です。
②媒体の多様性
鉛筆、ペン、チャコール、インク、パステル、水彩、デジタルツールなど、さまざまな道具や媒体を使って行われます。それぞれの道具の使い方によって独特の質感や表現力が生まれます。
③ドローイングの手順
〇アイデアの構築
最初に、描く対象やテーマについてアイデアを構築します。
イメージやコンセプトを明確にし、描きたいもののビジョンを持ちます。
〇下絵の作成
次に、下絵を作成します。下絵は、全体の配置や構図を決めるための草稿です。
軽い線や形状のガイドラインを使って、要素の配置やバランスを調整します。
〇形状やディテールの描写
基本的な形状を描き始めます。被写体の外形や輪郭を描き、細部のディテールや特徴を追加していきます。
この段階では、正確な描写や比例に注意を払います。
〇トーンやシェーディングの追加
形状が描かれたら、光と陰の表現や立体感を付けるために、トーンやシェーディングを追加します。
線やトーンの使い方を工夫し、被写体の立体感や質感を表現します。
〇色の追加
カラードローイングを行う場合は、色を追加します。
水彩、パステル、カラーペンシル、デジタルペイントなど、選んだ媒体に応じて色を塗り込んでいきます。
〇修正と仕上げ
最後に、描画の修正や微調整を行います。必要に応じて消しゴムや修正液を使って、細部を整えます。
また、背景や周囲の要素を追加して、作品を完成させます。
ドローイングは、芸術的な表現や視覚的なコミュニケーションの手段として広く活用されています。絵画、イラスト、アニメーション、グラフィックデザイン、建築、工学など、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。
ドローイングのスキルを磨くためには、継続的な練習と実践が必要です。さまざまなスタイルや技法を試したり、他のアーティストの作品を研究したりすることも、ドローイングの成長に役立ちます。
2.クロッキーとスケッチ、どう違うの?
クロッキーとスケッチ(sketch)には明確に異なる部分があります。
クロッキーは簡潔に数分で描き、短時間に仕上げます。被写体の形状やポーズを素早く捉えることに重点を置き、観察やアイデアを捉える場合などに使用されます。
一方、スケッチは、詳細な描画や表現を目指し、完成度の高い作品を作るために時間を要します。絵画やイラストの下絵や、設計のために使用されることが一般的です。
(1)クロッキーの特徴
人物・動物などの動きあるものを簡潔に線だけで描きます。
クロッキーは迅速に描くため、時間制約のある状況や動きのある被写体を捉えるのに適しています。簡潔な線や形状で構成され、詳細なディテールにこだわるよりも、被写体の基本的な形状や輪郭を捉えることに重点を置いて描きます。
比較的短時間で、長くても10分程度で仕上げます。
そのため対象の動きに焦点を合わせたり、目立つ質感や光沢などに注目したり、デフォルメ(歪曲)・強調・省略・抑制などの造形操作を施す特徴があります。
①ポーズや動きをとらえる
クロッキーは被写体のポーズや動きを素早く捉えることに焦点を当てています。
そのため、ライブモデルのセッションや、動物の動きの描写などに頻繁に使用されます。
②瞬間の印象を伝える
クロッキーは瞬間の印象を追求するため、表現力やエネルギーを重視します。ラフで素早い線描によって、被写体の雰囲気や特徴を伝えることを目指します。
③クロッキーの描く手順
〇被写体の観察
クロッキーを始める前に、描く対象となる被写体をよく観察しましょう。
ポーズや形状、動き、光と影の配分など、被写体の特徴を把握します。
〇ラフに短時間で描く
まずは素早くラフに描きます。簡単な線や形状を使って被写体の基本的なフォルムやポーズをキャプチャします。この段階では、詳細なディテールを追求しないでおきます。
〇構図の決定
被写体をどのようにキャンバスに配置するか、構図を決定することが重要です。被写体の配置や背景の要素を考慮しながら、バランスのとれた構図を作りましょう。
〇ポーズや動きを捉える
クロッキーでは、被写体のポーズや動きを迅速に捉えることが求められます。被写体が動いている場合は、瞬間的な印象を描くために、迅速な線描やジェスチャーを活用します。被写体の個性や表情、特徴的な形状などを重視し、それを描画に反映させましょう。
(2)スケッチの特徴
スケッチの語源「sketch」は日本語に訳すと写生です。人物・生物・風景など対象の持っている形や特徴・質感などを全体的にとらえた素描に近く、それほど時間をかけずに大まかに描きます。
被写体の形状、テクスチャ、光と影の配分など、ディテールを追求することが特徴です。
鉛筆に限らず色鉛筆やクレヨン・水彩・油彩絵具などを用い、絵に興趣や臨場感を添えます。
「ラフスケッチ」「水彩スケッチ」「写生」など
①下絵やデザインのための使用
スケッチは、絵画やイラストの下絵や設計のために使用されることが一般的です。より完成度の高い作品を作成するための準備段階の手法として位置づけられます。
②アート作品への発展
スケッチは、詳細なディテールや仕上げを加え、アート作品やイラストレーションの下描き目的で描く場合もあります。スケッチを基にして絵画やイラストを制作する際には、より洗練された表現やカラーの追加が行われます。
③スケッチを描く手順
スケッチを始める前に、被写体をよく観察しましょう。細部の形状やテクスチャ、光と影の配分など、被写体の特徴を注意深く観察することが重要です。
〇ラフなスケッチ
まずはラフなスケッチを行います。簡単な線や形状を使って、被写体の基本的なフォルムや配置を捉えます。この段階では、まだ詳細な描画には入らず、全体のバランスや比率に重点を置きましょう。
〇詳細なディテールの描画
詳細なディテールを追加します。被写体の形状やテクスチャ、模様など、細部まで注意深く描き込み、輪郭や線の質感・細かさを表現しましょう。
〇光と影の追加
被写体の光と影の配分を追求します。陰影やハイライトを正確に表現することで、被写体に立体感や深みを与えることができます。光と影の描写には注意を払います。
〇仕上げと修正
最後に作品の仕上げと必要な修正を行います。細部の微調整やバランスの調整、色彩の追加など、完成度を高めるために必要な作業を行いましょう。また、必要に応じて修正を行い、より正確な描写を目指します。
〇インクや色の追加
完成したスケッチ画にインクや水彩、色鉛筆などを追加し仕上げるケースもあります。被写体の色彩や質感を表現することで、より鮮やかな作品を作り上げることができます。
3.アートスクール大阪「デッサン基礎コース」 オリジナルカリキュラムのご紹介
誰でもクロッキーが上手に描けるようになる ー人体クロッキーカリキュラム演習テキストー
アートスクール大阪デッサン基礎コースでは、表現力を飛躍的に向上させ、個々の目的に合わせたきめ細やかなカリキュラムをご用意しています。
二次元上のバランス感覚、三次元モデリング感覚、人体美術解剖の造詣を深め、現場での「速描」に挑戦する実力を養うことができます。
バランス感覚の重要性を理解し、作品に深みと調和をもたらすために、二次元上でのバランス感覚を徹底的に身に付けましょう。作品にリアリティと奥行きを与えるために、三次元モデリング感覚を磨きます。
また、人体美術解剖の知識を深め、人物描写の精度とリアリズム向上・筋肉の動きと構造を理解し、人体の美しさを的確に捉える技術を習得します。そして現場での即興的な描写に挑戦できる瞬発力と創造力を鍛えます。
速いスケッチやスピーディな表現を通じて、クリエイティブなスキルを高めましょう。
このクロッキーカリキュラムは、アーティストのポートフォリオやキャリアの発展に不可欠なスキルを身に付けるために設計されています。自身の表現力を飛躍的に向上させ、プロの領域で輝くための基礎を築く事を目的としています。
①二次元上のバランス感覚を身に付けよう(人体クロッキーⅠ演習)
アートなバランスを学び、二次元作品に深みと調和を加える方法を学びます。
デザインの魅力を引き出すバランス感覚を磨くことができます。
②三次元モデリング感覚を身に付けよう
(人体クロッキーⅠ演習)
立体的な描写力を養い、作品にリアリティと奥行きを与える手法を学びます。
物体のフォルムや質感を正確に再現する三次元モデリング感覚を身に付けましょう。
③人体美術解剖の造詣を深めよう
(人体美術解剖図模写)
人体の構造や筋肉の動きを理解し、リアルな人物描写を追求する方法を学びます。
人体美術解剖の知識を深め、より精緻な表現力を身に付けることができます。
④現場で「速描」を試みよう(人物絵画会・クロッキー会)
比較的短時間で人体の形や動静をとらえます。
大きく人体をイメージし、多少の狂いは気にしないで、直感で大体に元気よく線描します。
瞬発力を鍛え、素早く正確なスケッチを行う方法を学びます。現場での即興的な描写に挑戦し、クリエイティブなスキルを高めましよう。
4.さまざまなカリキュラム・テキストを使ってドローイング表現の幅を広げることが出来ます。ポートフォリオ制作に最適です
ドローイングの力を最大限に引き出し、魅力的なポートフォリオを制作しましょう。コスチュームデッサンクロッキーや風景デッサン&スケッチ、コンセプトエスキース、プレゼンスケッチ、キャラデザ、絵コンテなど、幅広いカリキュラムで表現力を高める講座を提供しています。
アートの才能を磨き、個性豊かな作品を生み出すためのクリエイティブな道具を手に入れましょう。
ポートフォリオ制作や将来のデザインキャリアに向けて、自信と実力を築く一歩となる講座です。
①コスチュームデッサン&クロッキー
コスチュームデッサンは、ファッション業界、イラストレーション、コスプレなど、様々な分野で役立つ表現技術です。正確な描写やデザイン力を開発し、アイデアやクリエイティブなビジョンを視覚的に伝えるために活用することができます。
また、小説や漫画・映画のキャラクターデザインなど、ストーリーテリングを伴う作品において、キャラクターの衣装やコスチュームを描く必要があります。アイデアを具現化し、クライアントや製造業者とのコミュニケーションを円滑に行うために欠かせないスキルです。
②風景デッサン&スケッチ
風景デッサンやスケッチは、視覚的な表現力や観察力・風景の美しさや特徴を捉える能力を高めるための重要な技術です。これらのスキルは建築、都市計画、観光、出版、美術などの様々な業界で必要とされています。
プレゼンテーションやクライアントとのコミュニケーションにおいて視覚的な表現を提供し、自身のアイディアや細やかなニュアンスを伝えることが可能です。
③コンセプトエスキース
コンセプトエスキースは、アイデアやコンセプトを視覚的に表現し、コミュニケーションの支援に重要な役割を果たします。デザイナーが創造的なアイデアを形にすることで、プロジェクトの進行やクライアントとの意思疎通がスムーズに進みます。
さまざまな場面で役立つスキルですが、プロダクトデザイン・自動車業界・グラフィックデザインの分野では特に重要なデザインプロセスの一端を担います。
プロダクトや自動車の外観や内装のディテールをスケッチすることや、ロゴやパッケージのデザイン等、デザイナーがアイデアを具現化しスタイリングの方向性を確立する場面で役立ちます。
④プレゼンスケッチ
プレゼンスケッチは、プレゼンテーションやプロジェクトマネジメント等の場面で、コミュニケーションの一環として主にビジネスやデザインの分野で使用されます。アイデアやコンセプトを即興的なスケッチやラフなデッサンでグラフィカルに表現することで、説明や議論をサポートすることが可能です。
また、アイデアを視覚的に明確に伝えることが求められる会議・ブレストセッションなどでは、クライアントやチームメンバーに視覚的なインパクトを与えながら、アイデアを共有することができます。
⑤キャラデザ
キャラクターデザインのスキルは、アニメ・マンガ・ゲーム・広告・イラストレーションなど、多様なクリエイティブな業界で必要とされています。
イラスト制作・アニメ・マンガ・ゲーム開発などだけでなく、広告・マーケティング業界においてもキャンペーンやパッケージデザインなどの場で活躍する機会を得ることができます。
また、個人としてもオリジナルキャラクターの制作や販売、ファンアートの制作などの活動にも活かすことができます。
⑥絵コンテ
絵コンテ(Storyboard)は、映像制作のプリプロダクション段階で重要な役割を果たします。
映画・アニメーション・広告・ゲームなどの制作現場で、ストーリーボードの作成や絵コンテを用いることで、映像の構成や演出・ストーリーテリングやシーンの構成を視覚的に表現することができます。
明確な演出のイメージを制作スタッフとアイディアを共有できるため、制作プロセスの円滑化とクオリティの向上に寄与します。
安田 正弘
- [ Profile ]
- 武蔵野美術大学造形学部油絵学科 卒業
白日会会員
損保ジャパン美術財団奨励賞 受賞
日展入選(洋画)
朝日放送 カルチャーコーナーに出演 - ≫ 講師インタビュー
- ≫ アートスクール大阪 講師FILE(動画)
- ≫ ライブデッサン(動画)
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展覧会に出品し作品を直接鑑賞するリアルな出会いとは違った、WEBでイージーに世界のさまざまなアーティストやギャラリストに出会いコミュニケイトできる空間はとても魅力で面白く、表現の今を感じています。
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