[藝「大」コレクション パンドラの箱が開いた!]に行ってきました。

かみさんの学生時代の自画像が、
東京藝術大学美術館
[藝「大」コレクション パンドラの箱が開いた!]に展示されたので、夏休みに家族で行ってきました。黒田精輝、横山大観、平櫛田中などの巨匠の作品と一緒にかみさんの自画像が展示されていて面白かったです。

黒田精輝の作品を久し振りに見て、あらためて興味がわいてきたので、
10年ほど前に古本屋で買った黒田精輝の「絵画の将来」を引っ張り出してパラパラとななめ読みしておりました。

2章目の「洋画問答」のところでは
明治時代の油絵の「新派」と「旧派」の違いについて述べられております。
現在ではそういった新旧の違いが問題になることはあまりありませんが、
西洋文化がどんどん入ってきた明治時代当時は、
異なる技術や感覚がぶつかりあって「新」だの「旧」だのに分かれたということでしょうか。

明治当時の油絵の「新派」「旧派」の違いの一つには絵の「稽古の仕方」にあるようです。

「新派」の「稽古の仕方」というのは、
例えば人物を描くにあたっては「石膏だの裸体に依って」1年や2年、
人物を描く稽古によって「物を見る目の寸法を拵へる、
其内に手は独りで慣れて来る、
それで先づ目の寸法と云ふ側をしつかり固めて置いて、
それから油絵をやらせる時には、
人の形はスツカリ書けると云ふ工合にさせる」というのが
「新派」においての「稽古の仕方」であるとのこと。

それに対して「旧派」の「稽古の仕方」は、
「何かを手本にして、それを写してまづ一寸云はゞ、筆の使ひ方を覚へる、木の葉はこうかくもの雲はこうかくものと云ふ形を知る、この覚へた形が癖に為つて自然のものに向つて、さてかくとなると先づ自分の御手本にした画が、目の先に出て来て、それから其手本の筆法でやらかす、こう云ふのが旧派の稽古の仕方と、旧派のかき方だと考えられ」るそうです。

黒田精輝は新派でしたのでその流れから考えると僕も
「新派」の「稽古の仕方」で絵画教育をうけていたんだなと今さら気が付きました。
アートスクール大阪でもどちらかというと「新派」的な方針の指導になりがちですね。

たまに生徒さんから「葉っぱってどうやって描くんですか?」とか
「雲ってどうやって描くんですか?」といったご質問をいただきます。
そういった個別のモチーフの「描き方」の指導
(「葉っぱはこうかくもの」、「雲はこうかくもの」といったような) は
「旧派」的な「稽古の仕方」のようで、新鮮な感じをうけます。
そういったご質問をいただいたときは
具体的な色や形を指導するのではなく、
それぞれのモチーフのもっている構造的な特徴や光の影響の効果など、
応用のきくようなお話をしたりします。

 

美術科 講師:松田

 

松田 一聡

松田 一聡
Profile
'01 東京藝術大学大学院油画技法材研究室終了
'11 「風景と静物画」展 (ホキ美術館)
'12 「重 力」展 (Gallery Suchi)
'13 アートフェア東京 2013 (Gallery Suchi ブース)
Message
物事を学ぶにあたっては一直線に目的に突き進むよりも、寄り道や遠回りをしたほうがより立体的な理解を得られるという事があるのではないかと思います。絵画の制作においても、寄り道や遠回りなど、一見は無駄に思えるような行為を経る ことで、最終的により豊かな表現に達することができると思います。そういった行程も絵画制作の楽しみのひとつです。脇道の向こうの風景に少しでも心が動いたら、迷わずにそちらの方向に足を向けて進んでみて下さい。
ArtWorks

 

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