デジタル作画における『メリット』『デメリット』
コミックイラストコースみなさま、こんにちは!コミックイラストコース デジタル担当・多田です。
今回はデジタル作画におけるメリット・デメリットのお話です。
◆ペン入れはむずかしい
突然ですが、わたしはアナログでのペン入れ作業がとても苦手です。
学生のころ文房具店で買ったGペン…ほとんど使わないまま、より手軽なハイテックCやコピックマルチライナーを使い始め、そのままつけペンを敬遠するようになってしまいました。
憧れの漫画家さんのシュッと力強い描線…丸ペンの驚くほど繊細な描線…思い通りの線を引くためには相当量な練習が必要だったわけですが、その大切さに気付いたのは大人になってからでした。
◆ペンタブレットでデジタル作画をはじめよう!
月日は流れ、デジタルツールがひろく普及する時代になり、わたしもペンタブレットを導入し始めました!
ペンタブレットはまさに文明の利器で、つけペンの道具をそろえたり洗浄したりする手間もなく、PCがあればすぐさまデジタルイラストを描き始められるという優れものでした。
◆デジタル作画の最大のメリットは『拡大できること』『やりなおしができること』
今まで塗り残しやはみ出しをしないように慎重に作業をしていた細かい箇所が、ぐぐーんとクローズアップすることで解決しました!
魔法の呪文【Ctrl+Z】の『ひとつ手順を戻る』ショートカットキーを使えば、失敗した線も何度でもやり直すことができ、勢いのある線を臆することなくどんどん引いては消し、気に入った線が出るまでやり直しを重ねるようになりました。
ところが弊害はすぐに訪れます。
◆デジタル作画の最大のデメリットも『拡大できること』『やりなおしができること』
メリットと、デメリットはじつは同じなのです(!)
【Ctrl+Z】のショートカットキーを使いすぎるあまり、だんだん線は雑になり(やり直しが際限なくできてしまうので、当然です)気に入った線が出る確率が下がってきてしまいました。
ものすごくズームインして作業してしまう癖がついたせいで、1日中作業していたはずなのに引きにして見たときにほとんど進んでいなかった…と気付くこともしばしば。
『拡大すること』や『やり直しをすること』は便利でありながら、同時に作業を煩雑にしてしまう罠でもあるわけです。
◆じつはアナログ作画にもメリットはたくさんある
ここでアナログ作業に立ち返ってみると、じつはつけペンと原稿用紙でのアナログ作業にも大きなメリットがあるのです。
ポジティブな意味で『あきらめがつきやすいこと』『完成がわかりやすいこと』です。
はみ出してしまったり、やり直しがきかないデメリットもありますが、やり直しがきかないからこそ丁寧に慎重に線を引きます。拡大もできないので、細かい箇所にこだわりすぎて時間ばかりが過ぎる…ということもありません。
画材のあとかたづけの手間や失敗のリスクはありますが、それでも手描きの原稿には魅力があります。
◆一歩下がった位置からアドバイス
ときどき学生さんで、【Ctrl+Zの魔法】に囚われていたり「そんなとこまで誰も見えへんで!」というところまでキャンバスを拡大している方がおられます。
わたしたち講師はそんな方にSTOP!を言う役目もあると思っています。
ひとりでやっていると気づかないことですが、今取りかかっている作業を客観的に見てもらう、というのは実はとっても大事なことなのです。
集中しすぎている学生さんには「ちょっと休憩室でコーヒーでも飲んでおいで~」とお声掛けするようにしています。PCに戻ってきたときに、客観的に見えることがあるからです。
テクニックを教えたり、上達するヒントを与えるのは教本でもできることですが、学生さんと対話しながら、気づきを与えていくことができるのはアートスクールにスクーリングしているからこそ!と感じています。
多田 暢子