プロットについて その①

 こんにちは。マンガコースです。当コースでは基本的には入校された直後は課題に取り組んでいただくのですが、中にはそれと並行して作品作りに取り組まれる方もおられます。いろんな考え方があるので一概には言えませんが、当コースでは、『マンガを上達させるにはマンガを描くことが一番』と考えているからです。もちろん最低限の基礎画力は必要ですが、『誰がどこで何をしているのか?』ということを読者に解ってもらうことさえできれば、漫画自体を描くことは可能です。そしてマンガは画力だけでなく、話の構成力や演出力なども必要です。それらのレベルを上げるためには、基礎画力を上げる課題にプラスして、マンガ作品を作るという実践的なことも大事な要素になっていると考えています。また、マンガ作品そのものを描くということは同時に、大量にキャラや背景も描く必要があるということです。雑に描いては意味がありませんが、一コマ一コマ丁寧に描いていけば、一作仕上げるだけで相当な量の絵を描くことにもなるので、必然的に絵の練習にもなります。そのため、入校された時に既に描きたい作品があるという方には、積極的に作品作りにも取り掛かってもらっています。
 とはいえ、いきなり下描きから始めてもらうということはありません。必ずプロット(あらすじ)、もしくはネームを描いていただき、それをチェックさせてもらった上で、下描きに進んでもらっています。そのため、人によってはプロットやネームの完成に時間がかかり、結局課題が一通り終わった頃にようやく下描きに入る…ということもあります。今回はその、プロットの必要性や形式について、書いてきたいと思います。

 さて、そのプロットですが、ネームは比較的作ったことがある方も多いのですが、独学でマンガを描いている(もしくは全く描いたことがない)場合、作ったことがないという方が多いのではないかと思います。実際プロの方でもプロットはせずネームから描かれる方もおられますし、そもそも絵は描けるけど文章は書けないという方もおられると思います。ですが、プロットという作業は、マンガを描くのにまだ慣れていない方にこそ、しっかり取り組んでいただきたい作業です。

◆プロットを書く意義

 まずはプロットを書く意義についてです。

①話の全体の流れが把握できる
②ページ配分がやりやすくなる
③作品そのものが、アリかナシかを他人に判断してもらえる

 他にもいろいろあるとは思いますが、とりあえずはこの辺りでしょうか。それぞれについて補足させていただきますね。

 『①話の全体の流れが把握できる』というのは、プロットをする最大のメリットです。マンガを描くことに慣れないうちに良くやってしまう失敗に、『ラストまで描けたことがない』ということがあげられると思います。ネームや下描きからいきなりしてしまうと、不慣れな場合はラストまでの流れがぼんやりとしかイメージできず(もしくは、ラストそのものを考えず)、描いているうちにどんどん話が反れたりふくらんだりして、収拾がつかなくなったり、終わりが見えなくて描くのに疲れたり飽きたりするパターンです。けれどプロットを作れば、少なくともラストまでの道筋はある程度決まります。そして全体を把握できれば、その流れの中で不要なエピソードを削ったり、逆に足りてない部分を膨らませるなどして、ストーリーを洗練させていくことが出来ます。もちろんネームでもそれはできますが、ネームは画面構成も同時にしなければならないので直す手間が大変です。全体を簡単に見通せ、直しも文字だけなら手間も減るので、プロットは作品作りをする上でとても有効だと思います。

『②ページ配分がやりやすくなる』というのは、①と似ているのですが、もう少し具体的な作品像を描ける形になります。何ページくらいの作品になりそうか、物語のどのシーンにページを割けば読みやすく面白い構成に出来るか?などです。ページ制限のない状態で作品を描くのであればあまりその辺りは気にしなくても構わないかもしれませんが、実際には投稿規定があったり、そもそも自分自身が描けるであろう枚数を大幅に超えるものは、作品の出来上がりが途方もなく先になってしまうので、モチベーションの維持が大変です。また、どのシーンにも同じくらいのテンポでページを割いてしまうと、見せたかったシーンの印象が薄くなりますし、読者も読むのが退屈になってしまうかもしれません。そのためにも、コマを割る前に大体のページ構成を計画してやることは、マンガの演出上、とても大切です。

『③作品そのものが、アリかナシかを他人に判断してもらえる』というのは、この時点で誰かに見せる予定がない方には関係のない項目です。ですが、投稿や持ち込みなどして担当編集者さんがついた場合、その話自体が面白いかどうか、雑誌や発表媒体に合うかどうか、そもそもマンガという『商品』になりうるかどうかを判断してもらうためにプロットが必要になります。話の構想を頭の中だけで考えて、それを話して伝えるというやり方も無しではないのですが、やはりきちんと文字で書き表した方が、相手も冷静に判断できますし、伝わりやすいです。また、担当さんによっては、ネタを複数提出するように求める場合があります。この時すべてネームで仕上げるととても時間がかかりますし、ボツになったものにかかった労力がかなり大きくなってしまいます。(人によってはネームからしか見ないという担当さんもおられますが…。)プロットも大変ではあるのですが、ネームを完成させるよりは時間と労力の短縮になるかと思います。

今回、文字ばかりで長くなってしまったので、プロットの形式についてはまた次の機会に…。

 

 

井原 安子

ihara2014
Profile
同志社 大学経済学部卒業
大学在学中 マンガ家デビュー
現在はフリーのマンガ家として雑誌掲載
コミックス発行などで活躍中
Message
マンガを描く上で、「やる気」はとても大切な要素です。
一人では持続させるのが難しくても、描く意欲を持った仲間と一緒なら、きっと頑張れるはず!
描く本人自身 も楽しみながら、一緒に学んでいきましょう!
ArtWorks
講師インタビュー

 

井原講師が在籍しているマンガコースのコース紹介はこちらです。

このページのトップへ