アナログ作業でちょっとした疑問集 ~下描き~ペン入れ編~
マンガコースアナログ作業でちょっとした疑問集~下描き編~
こんにちは。マンガコースです。
ここ数年で『マンガ制作は一からフルデジタルで』、という方がかなり増えています。とは言えデジタル作画のための環境が整っていなければ、やはり機材を揃えて描きはじめるのは金額的にハードルが高いですよね。また、アナログの持ち味を生かしたいという方もおられます。ですので、まだまだマンガ原稿をアナログで制作されておられる方も多いです。
そこで今回は、マンガコースの受講生でアナログ制作初心者の方から技術面のことでよくご質問されることや、ちょっとした小技などをこちらにまとめてみたいと思います。良かったらご覧くださいね。
【下描き編】
◆下描きってそもそもどれくらい描き込めばいいの?
→ペン入れの時にきれいに描き込めるのであれば、簡単でも構いません。ただ、あまり慣れない頃は、『下描きをコピーしたらペン線のように見える』ほど丁寧に描き込むことをお勧めします。その方がペン入れで迷わないで済むので綺麗に出来るので、仕上がりが変わります。
あまり描き直しを何度もすると、直接そこにペン入れをするタイプの方は紙が傷んでペン入れが綺麗に出来なくなるので、気を付けて下さいね。
◆印刷には出ない水色のシャーペン芯で描いた下描きは消さなくてもいいの?
→普通の黒で書いた下描きのようにきれいに消す必要は必ずしもありませんが、水色でも濃い時は印刷に出る場合もあるので、ある程度は消しておく方がベターです。もちろんきれいに消してもらっても良いです。
◆原稿用紙を上下間違って使ってしまった!やっぱり描き直すべき?
→そのままで大丈夫です。ただし上下が分かりくい構図の場合は、原稿用紙の印刷範囲外のところに『上下』もしくは『天地』を記入しておきましょう。
◆途中から違うメーカーの原稿用紙で描いてしまった…
→同じ大きさ(投稿用B4サイズ、もしくは同人誌用A4サイズ)同士の原稿用紙であれば、メーカーや紙の厚さがバラバラでも問題ありません。
◆下書きしているうちに原稿用紙が汚れてしまう…
→芯の粉を手や定規でこすって汚していることが多いです。また手汗や油分が染み付くと消しゴムをかけにくくなりますので、下描きの時点から手袋をはめたり、ティッシュや布などを下に敷いて、手で直接原稿用紙を触らないようにしましょう。定規もマメに汚れをふき取ってあげましょう。
◆筆圧が高くて、下描きの線が消しゴムで消えません…
→消えない下描きの線はあとで上手にホワイトで丁寧に消していく…という方法もありますが、かなり手間がかかって面倒です。なので、多少残っても大丈夫な水色のシャーペンの芯で描くか、きちんと描いた下描きをあとで別の紙にトレースして、それにペン入れをするか、ペン入れ自体をトレースで行うようにしましょう。
◆見開きで描きたいけど、どうやってするの?
→ページを2枚つなげて1枚の大きな用紙に見立てて描くことを見開きといいます。迫力のある画面などで使うと効果的です。やり方は色々ありますが、代表的なものは以下の通りです。
①原稿用紙の左右それぞれのページのノド側の余分な部分を、カッターとアルミの定規を使って綺麗に切り落とす。(そのあと再利用する人は捨てずにとって置いて下さい)
②切り落とした原稿用紙を並べて、裏からメンディングテープやマスキングテープなどを貼ってつなげる。
③その状態で下描き~仕上げまで行う。
④出来上がったらテープをはがして1枚ずつに戻す。(つなげたままでももちろん構いません)
⑤原稿用紙のサイズがそろわない事が気になる場合は、①で切り落としたノド部分の用紙を裏からテープを貼ってつなげて、元の大きさに戻す。
切るのが嫌な方はトレース台を使ってつながった絵のように描いてみたり、片方だけ切り落として重ねるようにしてつなげるやり方もあります。
見開きは迫力が出ますが、ノドの部分は本として綴じた時どれくらい見えるかわかりません。なので、見えなくても支障がないように、絵の重要な部分がノド部分に来ないように気をつけましょう。
◆消失点を原稿用紙の中に入れると、背景のひずみがひどくなってしまう…
→背景によっては、消失点が近いとおかしな見え方になります。その場合、原稿用紙に消失点用の紙を継ぎ足して遠くに設定したり、グリッド線を引いたりパース定規を使ったりして、違和感のない背景を描けるようにしましょう。慣れない間は消失点を目分量で決めて背景を描くと歪むことが多いので、出来るだけきちんと消失点は設定してあげて下さい。
【ペン入れ編】
◆気が付かない間にインクが付いて原稿が汚れてしまう…
→下描きの時に汚すのと同じで、ペン入れはさらに汚れやすい作業です。小指(薬指も残してもOK)以外の指部分を切り落とした手袋をはめたり、手が直接紙に触れないように布などを敷いたりして、汚すリスクをできるだけ回避しましょう。また、定規は特にペン入れの時に大量のインクが付きっぱなしになる道具なので、こまめにふき取るように心がけましょう。
◆ペン先はどれくらいで替えるべき?
→人によって筆圧や描き癖が違ったり、ペン自体に当たりはずれがあるので一概に『どれだけ描いたら交換』とは言えません。描いているうちに何となく線が思っているより太くなってきたな、描きにくいな、と思った時が替え時です。描いていると徐々に太くなっていくので、『太くなった』と気付きにくい方は、何コマか描いたらペンを下ろしたての時に描いたコマの絵と見比べて、線が太くなっていないかマメに確認するようにして下さい。また、当たりのペン先はかなり使ってもいい線でずっと引けるのですが、はずれの場合は使ってすぐでも引きにくかったり太かったりしてだめな時もあります。
人によるとは思いますが、出来るだけ下ろしたてのペン先は髪の毛や目、背景など繊細な線を必要とする部分を描く時に使い、使う内に少し太くなってきたら輪郭線などの主線用にして、とても太くなってきたら効果で太い線を引きたい時用に…と、同じペン先を順々に使う用途を変えていくようにしてあげると、無駄が少し減りますよ。
◆描く線を間違えてしまった!インクをこぼして汚してしまった!すぐにホワイトで修正してもいい?
→ホワイトは汚れが付きやすく、ホワイトの上にペン入れやベタは基本出来ないので、修正したい気持ちはわかるのですが、ベタが終わるまではホワイトは我慢して下さい。どこが間違ったいるかわからなくなるかも…ということでしたら、間違った所に斜線を入れたり、水色のシャーペンで目印を描くようにしておきましょう。
◆線がにじんだりかすれたり…。これってペン先が原因?
→ペン先が原因の時もありますし、紙が湿気っていたりインクが古くなったり濃くなったりという時もあります。ペン先を変えてもよくならない時は、インクを新しいものに替えたり、水を一滴二滴垂らして少し薄めたり、紙を乾燥剤の入っている密閉容器にしばらく入れて湿気を飛ばしたりするなどしてみましょう。もちろんそれで解決しない時もあるので、その場合、余裕があれば最悪描き直しということも考えておきましょう。
今回はここまでです。ちょっとしたことですが、マンガ制作に少しでも役立てれば幸いです。
次回は『ベタ~ホワイト~トーン編』をお届けしたいと思います!
井原 安子
- Profile
- 同志社大学経済学部卒業
大学在学中に漫画家デビュー。
以降、読み切り・連載作品を発表、コミックス出版を重ねる。
現在はフリーのマンガ家として活動中。 - Message
- 小さい頃から、マンガを描くのも読むのも大好きで、今は趣味も仕事もマンガという大人になりました(笑) 特に読む方はジャンル問わずです。
好きな気持ちとやる気は、マンガ制作の大きな力になります。初めての方もレベルアップしたい方も、ぜひ一緒に頑張っていきましょう! - ArtWorks