進撃の巨人展FINALに行ってきました!! (以前に訪れたマンガの原画展です)
マンガコースこんにちは。マンガコースです。
このところ行く予定にしていた絵画展が中止になってしまい残念ですね…。そこでちょっと(?)前に行って面白かった漫画の原画展のことを上げてなかったな~と思い出したので、今回書かせていただきます!
訪れたのは「進撃の巨人展FINAL」です。諫山創先生原作の、10年越えで連載されている少年漫画です。大阪では2019年秋に、前期後期と日程を分けて展示物を少し入れ替えて、漫画の原画展としてはわりと長い期間開催されていました。アニメ化はもちろん実写映画にもなり、またテーマパークなどのアトラクションや色んな企業とのコラボなども行われているので、原作を読まれたことがない方でも目や耳にしたことがある方は大勢おられると思います。そんな色んな展開を見せる作品だけに、展示も原画だけでなく、ジオラマや映像なども組み合わせたエンタメ性の高い展示となっていました。 原作の魅力は、私個人の意見ではありますが、意表をつくストーリー展開、複雑に入り組んだ設定の練り込みやキャラの魅力など色々ありますが、その中でも特に一番すごいと思っているのが「演出の巧みさ」です。話の構成や展開の見せ方はもちろん、マンガとして工夫を凝らしたコマ割りや絵の構図はもちろん、ページめくりでの効果や雑誌掲載時における次回への引きの巧みさなど、担当編集者の方もおられるとは言え、基本お一人でここまで出来るものなのかといつも感嘆してしまいます。そしてこの「進撃の巨人展FINAL」でも、その演出の巧みさはしっかり原作から受け継がれていました!
まず入場後すぐ、物語の象徴でもある「壁の中」と「壁の外」、どちらかのルートの選択を迫られます。選ばなかった方のルートにある原画は見ることは出来ないので悩ましい選択です。私は「壁の中」を選ぶ事にしました。 こちらのルートでは、巨人が壁を壊すまでに壁の中で起こっていた出来事を描写しているシーンの原画を展示してありました。物語は最初、その「壁の中」から始まることもあり、原画も連載初期のものが多かったです。その中で、作中の重要キャラの過去回で描かれていた「壁が壊されるよりかなり前の出来事」の原稿も展示してあったのですが、そこで面白いものを見つけました。 普通マンガの原稿は、製本する際切り落とされてしまう紙の端の方に塗り残しなどの余白が出来ないようにするため、わざと印刷可能範囲より余分に絵を描くようになっています。そこは私達読者が目にすることがない部分で、逆に言えば、省かれてもいいような絵を入れるようになっています。ですがそれを逆手にとって、「切られるとわかっている場所にあえてその時間軸では一緒にいるはずのないキャラ」がそこに描き込まれていたのです!小さい絵ですし、もしかしたらたまたま髪型が同じになっただけのモブキャラなのかも知れませんが、もしや諫山先生がちょっとしたお遊びでそこに描かれたのでは?とワクワクして見てしまいました。これは原画展でしか見ることの出来ない部分なので、とってもお得な気分でした! ちなみにもう一方のと「壁の外」のルートでは、購入した図録によると、同じ時間軸頃の、別のメインキャラ視点の出来事を描いたシーンの原稿が展示してあったそうです。そしてここでは、ルートを「選択させる」だけでなく、巧みな演出が行われていました。 これは片方の展示を見ただけでは気がつかなかったのですが、図録で見ると(またその図録の原画の配置の演出構成もすごいのです)、それぞれのキャラのその時の出来事や思いを対比させたシーンを選んであり、また同じ出来事が起こったシーンでは、壁の中と外ではどういう風にそれぞれ見えていたのかが一目でわかる構成で、おそらく連載時にはこのような形で展示されるとは考えておられなかったと思うのに、まるでこの展示方法を最初からわかっていて描かれたかのような対比原稿になっているのです。かなりの巻をまたいで描かれたシーンではありますが、これはやはり作品全体通して見た時の演出力の凄さが感じられるところではないでしょうか。 あと、片方を選択するともう片方の原画は見れないと書きましたが、実は少しだけ向こうの世界をのぞけるように2つを隔てる壁の一部に穴が開けられていて、そこから向こう側を少しのぞけるようになっていたのも面白い演出だと思いました。…もちろんそこから向こうの原画をはっきり見ることが出来ませんでしたが(笑)
壁が壊されたあとは、巨人達との戦いを見るゾーンに入ります。初っ端、空から無垢の巨人達がたくさん落ちてくる立体展示がされていて、まるで自分がその世界の中に入り込んだような錯覚に陥ります。…けっこう怖かったです(笑) そこからはかなり大量の原画が一気に展示されていました。主に色んな巨人との戦いのシーンだったのですが、すごかったのは、回を重ねる毎にその描き込み量が半端なく増えていたことです。線だけでなくトーンの重ね貼りや削りの処理もとても綺麗にされていて、アナログ原稿ならではの美しさにかなり見惚れてしまいました。 作家さんにも寄りますが水色でのトーン指定がかなり目立つ原稿も良くあるのですが、それがあまり目立たない(薄いのか少ないのか??)事も、余計に美しさに拍車をかけていたように思えます。さらに、インタビューでも答えておられましたが、人気連載になって行けば行くだけアシスタントさんも増えていき、その分原稿のクオリティを上げられた、と言うのもあったかも知れませんが、けれどやはり諫山先生の戦いのシーンを描くことに対するこだわりがどんどん上がっておられたせいではないかと勝手に思っています(笑)この美しさは印刷になるとそのまま再現されないので、生原稿の良さを再認識しました。
次はリアルスケールのジオラマと、原作の絵を2.5Dで再現したシアターゾーンです。マンガに出て来た小道具達が立体になっているだけでも嬉しいのですが、以前開催された原画展の時と違い、今回はそれらが物語の一部として演出された展示になっているので、より世界に没入できたように感じました。もちろん、その展示物と関連したシーンが描かれている原画も展示してあり、それぞれに原作者コメントもついていたので何重にも楽しめました。映像もかなり大きいサイズだったので、最前列で立って見ると、ジオラマ効果もあり現実との境目がなくなったようでした!この映像にも色々細かな工夫や配慮がされていたとのことで、スタッフの方の演出力にも本当に脱帽です。
その後はそれぞれのキャラクターにスポットを当て、そのキャラの印象的なシーンの原稿の展示、またこの後の展開に向けて、物語の大切なメッセージが感じられるシーンの原稿が続きます。ここは一枚一枚、色んなシーンを思い出しながらゆっくり見ることが出来ました。
そして今回の展示会の、ファンにとってはある意味目玉だった「最後の風景」の音声展示へ。マンガの原画展なのに、最終回を「音で見せる」という演出は面白かったです! 真っ暗な部屋で音だけに耳を傾けて想像力を膨らませて聴きました。…でも全然なにも私は予想できませんでしたが(笑)
ラストのゾーンは原作者・諫山先生のインタビュー動画と、たくさんのネーム展示です。ちゃんと展示されている分だけでなく、壁面のディスプレイとして大量のネームがちりばめられていました。ネームとはマンガの設計図のようなもので、お話を考えたあと、このネームの段階でコマ割りやセリフなどを決める、マンガを描く過程の中ではとても重要な工程です。漫画を描く身としては、このネーム展示はかなりテンションが上がりました!原画展でたまにネームが展示されていることはあるのですが、こちらで展示されていたネームには、なんと担当編集者さんからのコメントまでが記載されていたのです!ネーム自体あまり普段見ることが出来ないのに、担当さんからのコメントまで見られるのはレア中のレアです!このコメントはそのまま諫山先生に見せたわけではないそうですが、きっとこのコメントを元に打ち合わせをされたのだと思うと、色々想像がふくらみます!
最後の物販コーナーは漫画の世界に出てくる商会が運営しているという設定で販売されており、最後まで世界観を大事にしてくれたスタッフの方の、原作に対する敬意の演出が感じられてとても良かったです。
最近のマンガの原画展はディスプレイが工夫されていて、作品の世界観を展示の演出でより深く表現され、かつ原作の作られる様もじっくり楽しむことが出来るものが多くなって嬉しい限りです。特に今回の「進撃の巨人展」は、私が今まで訪れた原画展の中で1・2を争うほど楽しめました!FINALと言わず、ぜひまた開催して欲しい!と願っています。
井原 安子
- Profile
- 同志社大学経済学部卒業
大学在学中に漫画家デビュー。
以降、読み切り・連載作品を発表、コミックス出版を重ねる。
現在はフリーのマンガ家として活動中。 - Message
- 小さい頃から、マンガを描くのも読むのも大好きで、今は趣味も仕事もマンガという大人になりました(笑) 特に読む方はジャンル問わずです。
好きな気持ちとやる気は、マンガ制作の大きな力になります。初めての方もレベルアップしたい方も、ぜひ一緒に頑張っていきましょう! - ArtWorks