絵本づくりの考察 2.「擬人化」
絵本と表現コース先日、大阪市立美術館にて「江戸の戯画」展を観てきました。
有名な葛飾北斎の「北斎漫画」以外にも沢山の戯画というジャンルの絵が展示されていました。
その中でも歌川国芳の「金魚づくし」シリーズは、
生き生きとした金魚の「擬人化」が楽しい作品でした。
図録の表紙にもなっている「いかだのり」では、
金魚のヒレが手足となり、しっぽが着物の裾となり、まくり上げられ、
船頭の威勢の良さが表現されていました。
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この「擬人化」は日本の戯画でもおなじみの古くからの手法で、
いろんな者(獣、物)が人間のように思考・行動することで成立します。
「鳥獣人物戯画」では猿や兎や蛙が駆け巡り、
人間の真似をして神仏を拝み、
「百鬼夜行絵巻」では、捨てられた古い道具達が付喪神となり
人間を襲い享楽をつくしている。
また、現在の絵本でも「擬人化」されるのは動物だけでなく、
「車」や「食べ物」から「歯ブラシ」まで、なんでもそろっています。
擬人化する際は「設定元のそれぞれの持つ性格、イメージ」が
そのキャラクターに影響するので、
好きだから可愛いからとビジュアルだけで考えずに、
その物語世界の広がりを考えて設定する必要があります。
例えば、カメレオンは保護色で目立たないから、引っ込み思案の性格。
目覚まし時計は毎日同じ時間に鳴るから几帳面な性格など、
それぞれの属性が性格に反映されるとイメージが掴みやすいのです。
ただし、もう少しひねって考え、
それぞれの属性とは反対の性格ならと考えるとお話のイメージは膨らみます。
カメレオンが目立ちたがり屋ならば、
どういう行動をとるのだろうか?
怠け者の目覚まし時計が、朝に二度寝すれば、
お話はどう進行するのだろうかと考える事が、当たり前でない世界に繋がります。
そして「擬人化」されたキャラクターが生き生きと行動する状況を考えれば、
絵本は楽しく進行するのです。
絵本コース講師 中田弘司
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中田 弘司
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