知識や情報だけでは不十分、 必要なのは、細心の注意とリラックス。

西洋には、手製本を工芸的におこなう伝統があります。表紙には強さや頑丈さを求め、羊や山羊等の革を貼り職人がおこなっていましたが、今は趣味の一つして手製本は楽しまれています。

 

絵本コースも仕上げは、手製本なのです。

 

表紙には山羊の皮を貼りませんが、カラー出力紙に透明フィルムを貼ります。気泡が入らないように、引っ張りながら定規を使い圧着します。裏側には2mm厚のボール紙を貼ります。これで、ハードカバーの表紙を作ります。厚さは1mmでも良いように感じますが、たった1mm厚さの違いがその本のイメージ、見え方を左右します。経験上やはり2mm厚の方が、高級感があります。少しの違いの積み重ねが全体像に影響を与えます。

表紙の貼り方

本体は、スティック糊で張り合わせます。この糊は水糊のように水分を多く含まないので、乾いてから紙が波打ちしにくいのです。次に、張り合わせ束になった本の背を補強する為には寒冷紗(かんれいしゃ)という布を木工ボンドで貼付けます。ここは製本後、見えなくなる部分ですが、一番強度が必要な部分なのです。

 

寒冷紗というのは、荒く平織に織り込んだ布で、織り糸には麻や綿などが用いられます。この布は本の背の補強といった製本分野以外にも、食品分野(出汁をとるときや、チーズを作るときに、漉し布として)建築分野(漆喰を施行する際に、下地補強に)農業分野(農作物を寒冷紗で覆い、寒さ避けや日よけとして)といった多様な分野で使われています。

最後は両面テープで、カバーと本体を張り合わせます。接着面はカバーの折り返した透明フィルムと本体の紙、違う素材の接着には両面テープが効果的です。1冊仕上げるために、スティック糊、木工ボンド、両面テープとそれぞれの目的に合わせた接着剤を使います。

 

こんな風に今までの経験から選ばれた、多様な道具や材料を適材適所に使いますが、それだけでは不十分です。製本は簡単な作業です。しかし歪まないよう、汚れないように細心の注意が必要です。絵本のアイデア出しや作画とは違う神経を使いますが、やはり慣れと仕上がりのイメージを持つ事が重要です。そして余計な力が入らないようにリラックスして作業する事が全てのコツです。

 

絵本コース講師 中田

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