世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦
絵本と表現コース京都の細見美術館にて、南インドの出版会社「タラブックス」の本作りの全容を伝える展覧会がありました。少し前から気にはなっていた「水のいきもの」という絵本。無印良品や大型書店でディスプレーされていたシルクスクリーン仕上げで手製本、とても繊細な線で再現された美しい本。日本版は河出書房新社より出版されていましたが、作ったのは、この「タラブックス」でした。これはブックデザインとして優れた児童書に贈られる賞のボローニャ・ラガッティ(ニューホライズン部門)を受賞しています。
そして、この出版社はこれ以外にも職人たちとのチームワークによるハンドメイド本も多く出版し、また教育や社会問題をテーマにした物から、絵本や児童文学からグラフィック、そしてインド各地に伝わる民族画家たちの作品を多く出版しており、その全体を、紙の本の魅力を感じる事のできる展示でした。
▲今回の展示の「美しいチラシ」と「多様な出版物の表紙をレイアウトした展示会の図録」
特に目を引いたのはチラシの絵にもなっている「夜の木」(日本版はタムラ堂より出版、もう8刷り!)。インドの3人のアーティストが描く、ゴンド族の身近にあった木にまつわる話(夜のあいだに別の姿を見せる木として描かれた物語)をシルクスクリーンで刷り、手製本で仕上げた本。これだけはつい買ってしまいました。梱包のビニール袋から取り出すとインクの臭いと共に、ふっくらとした風合いの黒い紙の手触りがとても心地よいのです。
▲多様なビジュアル
▲折りや抜き型が生きた本の形態と多岐にわたり、そのどれもが面白い。
それ以外にも、展示は多数あり古いインドの民話を再現した「はらぺこライオン」等の子ども向けの絵本や、絵巻物をジャバラ絵本にした「つなみ」、「ロンドンジャングルブック」という旅行記で「夜の木」の画家のひとりがロンドンへインド料理店の壁画を描きに行くイラストエッセイ集等、日本語版も出版されている本がたくさん展示されていました。
▲日本でもアートンより2005年販売されていた「はらぺこライオン」
ブックフェアで見せるため2ページだけをサンプルでシルク印刷し、それを見たカナダの出版社から8000册のシルク印刷での発注を受けることとなり、そこからハンドメイド本の歴史が始まったといいます。
京都の細見美術館での展示は、もう終わりましたが「タラブックス」の本は、日本版もいろんな出版社からでており、興味がある方は探してみると面白いですよ。
◆絵本『世界のはじまり』ができるまで/タラブックスのユーチューブ
◆「夜の木」の日本語版出版社/タムラ堂
https://www.tamura-do.com/
◆タラブックスの記事/ヌメロ・トウキョウ
https://numero.jp/tarabooks-20190103/
絵本コース講師/中田弘司
中田 弘司
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