画材を選んでみよう!
絵本と表現コースこんにちは、絵本コース生川です。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。 コロナの影響で、1ヶ月ほどアートスクールも休校しておりましたが、 今はフェイスシールドやマスク、消毒、換気などを徹底して開講しております。
今回は、前回お話しした通り画材の違いについて紹介します。
・各画材の特徴 ・画材屋さんで選ぶときの基準 ・画材屋さんでよく置いているメーカー ・参考画像(前回デフォルメしたカメレオンを各画材、M画用紙で着彩) などを記載しておきますので ぜひ画材選びの参考にしてみてください。紹介画材
色鉛筆 パステル オイルパステル 透明水彩 アクリル絵具 アクリルガッシュ
以上6画材です。
色鉛筆
みなさんよくご存知でしょう。 小学生から慣れ親しんでいる色鉛筆です。 色鉛筆は種類によって、薄く柔らかい塗りから、濃密な塗りまで可能です。
《色鉛筆の特徴》
色鉛筆には芯が硬いものと柔らかいものがあります。
◇硬いもの 直線的な精密描写や、線描、平面的な重ね塗りを得意としています。
◇柔らかいもの 自然で柔らかい描写や、力強いタッチの線、立体的な重ね塗りを得意としています。 ものにより、クレヨンのような濃密な書き心地の色鉛筆もあります。
《画材屋さんで選ぶときの基準》
基本的に色鉛筆は試せるものが多いです。描きたい絵の方向に応じて、柔らかさや発色が自分に合うものを選ぶといいでしょう。
色鉛筆は紙目が、荒目などのボコボコした紙だと、白地が目立ってしまいます。 紙目の目立たない繊細な塗りをされたい場合、細目など目の細かい紙を選ぶといいでしょう。
《画材屋さんで置いてあるメーカー》
ホルベイン サンフォード(カリスマカラー) ユニカラー トンボ(色辞典など) ターレンス(ヴァンゴッホ) ファーバーカステル ステッドラー カランダッシュ など
《初心者にお勧め》
ホルベイン 硬さは少し柔らかめです。発色、色馴染みもいいですし、クレヨンのようなねっとりタイプではないので粉のふんわりとした表現も可能です。またホルベインは専用の色鉛筆ぼかし液があるので色鉛筆を溶かして使う表現も可能です。水彩色鉛筆よりも発色良く伸びるので表現の幅が広がります。
こちらは主にホルベイン、カリスマカラー、ペシリア(ユニカラー)を使っています。色によって使用メーカーが異なります。 M画用紙は中目くらいの紙肌なので、紙目が出てきます。
パステル
こちらはあまり触った記憶がない方もいらっしゃるかと思います。 学校でお馴染みのチョークに似た画材です。 純粋に色の粉を固めたものなので、発色がとても良く柔らかいタッチが特徴的です。 また、パステルは色の粉を固めただけなので、色鉛筆と違い定着力がありません。 その為、途中・最後には紙などに定着させるため、フィキサチーフという定着させるスプレーをかける必要があります。
《パステルの特徴》
パステルにも、硬いもの(ハードパステル)と柔らかいもの(ソフトパステル)があります。他にも中間のセミハードタイプのパステルや、ペンシルタイプや中間のパステルもあります。
◇硬いもの パステルは色鉛筆と違い細かいところの描写が不得意ですが、ハードパステルはソフトパステルよりも細かい描写が可能。その他に、ソフトパステルを塗る前の下塗りとしてハードパステルを使うこともあります。
◇柔らかいもの ハードと比べて色の乗りがとても良く、色馴染みもいいです。 ですが、柔らかい為粉が多く出るので、塗り込み過ぎれば限界値にすぐ達することもあります。また粉の質で下の色をどれだけ隠蔽してくれるか、どれだけ上に重ねられるかが変わってくるので、安物のパステルはお勧めしません。
◇ペンシルタイプ パステルの不得意な細かい描写を補ってくれるのがこのペンシルタイプのパステルです。見た目は色鉛筆と変わりありません。手も汚れず便利ですが、全てをこのタイプで描写するにはコスパが悪いですし、パステルの特徴的な滑らかな色の混ざり合いが表現しにくいかと思います。小さな面であれば問題ありませんが、大きな画面で描く場合適していないでしょう。細部の詰めや、線の表現に使用するのが一番お勧めです。
《画材屋さんで選ぶときの基準》
細さや、形の描きやすさも判断基準でしょう。 パステルは試し書きがしにくい画材なので、選ぶ時は気になるメーカーを少しずつ買い自分に合うかどうか試すことをお勧めします。パステルは絵具のような混色はできないので気に入った色を同一メーカーのみで揃えるのは厳しいでしょう。ベースとして好みのメーカーを揃えつつ部分的に他のメーカーを使うと様々な色の表現が可能になります。だいたい単品で1本(7cm目安)200円オーバーのものが多いので、あまりに安すぎるものは色のりが悪いものが殆どです。
《画材屋さんで置いてあるメーカー》
【ハードパステル】 ヌーベル カランダッシュ ファーバーカステル(セミハード) ホルベイン(セミハード) など (ハードパステルは種類が少ない。)
【ソフトパステル】 ファーバーカステル ホルベイン ラウニー シュミンケ ゴンドラ レンブラント など
《初心者にお勧め》
ファーバーカステル ソフトパステルはハーフサイズで売っているので色数の割に値段がお手頃です。形も四角で細い為細かい描写もしやすいでしょう。
参考画像は、手持ちに色が少なかった為ヌーベルのハードパステルを主に使い、部分的にラウニーのソフトパステルを使っています。 M画用紙はしっかり凹凸もあるので、薄塗りだと紙目が目立ちますが、厚塗りであれば色がしっかりと入ってくれます。
オイルパステル
オイルパステルも聞き馴染みがないかと思いますが、クレヨンのような画材です。 パステルにワックスやオイルを加えられた画材です。 クレヨンよりも顔料が多くオイルも強く、滑らかでクリーミーな質感が特徴的です。
《オイルパステルの特徴》
オイルパステルにも硬いもの、柔らかいものはあります。
◇硬いもの クレヨンのような独特のかすれ感があり、モロモロとしたダマが特徴的です。オイルパステル独特のタッチを生かしたラフな描写に向いているでしょう。硬いものは、柔らかいものより厚塗りの限界値は早いです。
◇柔らかいもの 濃厚でクリーミーな色馴染みが特徴的です。 ラフにも塗れますし、油絵のような表現もできます。 色馴染みがいいのでグラデーションも滑らかです。 しっかりとした厚塗りが可能です。
《画材屋さんで選ぶときの基準》
硬さによって表現が変わるので、自分の求めているタッチにあった柔らかさのオイルパステルを買うのがいいでしょう。 ただ、オイルパステルもパステルと同じく細かい面を塗ることが不得意なので、大きめの絵を描くことが多いでしょう。そんな時、広い面を描くとかなり消費が激しいです。絵本の場合は20枚ほど絵を描くので継続していくためにはコスパ面も検討していく必要があります。
《画材屋さんで置いてあるメーカー》
サクラクレパス ホルベイン セヌリエ カランダッシュ ファーバーカステル ぺんてる など
《初心者にお勧め》
サクラクレパススペシャリスト 色伸びも良く値段お手頃。中間くらいの柔らかさなのでタッチを活かす塗りも、厚塗りもできます。
こちらはサクラクレパススペシャリストとホルベインのオイルパステルを使用しました。 柔らかめのオイルパステルですので、M画用紙の紙目は厚塗りをすれば目立ちません。
透明水彩
透明水彩は水彩の中でも透明度の高い水彩です。 完全に乾かした後色を重ねればセロハンみたいに色を重ねることが可能です。 他の絵具よりも粒子が細かいので、繊細な粒子の広がりを利用した滲みやぼかし、色の重なりによる自然な透明感が特徴的です。
《透明水彩の特徴》
透明水彩はメーカーや色によって水を加えたときの粒子の広がり方、色伸び、発色が違います。
◇粒子 キメ細かいものもあれば粒子が粒立った印象のもの、塗ってしばらくすると粒子が分離して不思議な色になる絵具もあります。
◇色伸び 同じメーカーでも色(顔料)によって色が伸びやすいもの、伸びにくいものがあります。伸びにくいものはムラが出やすく、伸びやすいものは均等に塗りやすいでしょう。
◇発色 透明水彩は水を利用して描く絵具ですので、水の分量にもよりますが乾くと色は薄くなります。 ですが、薄くなる比率もメーカーや絵具によっても変わります。物によっては乾いてもかなりの発色を保っている絵具もあります。
《画材屋さんで選ぶときの基準》
透明水彩は、水に広げて初めて粒子の広がり方などがわかるので、選ぶのが難しいかと思います。 ですが、透明水彩は絵具なので、水分の量で色の濃さが変えられ、混色もできます。 マゼンタ、イエロー、ブルーがあればある程度の色が作れますし、初めは気になったメーカーを3色ほど買い試してみてはいかかでしょうか? 透明度や耐光性などを重視している方はメーカーのHPや絵具に透明度の表記がしていることが多いので、チェックしてみてくださいね。(ホルベインHP参照:https://holbein-shop.com/)
《画材屋さんで置いてあるメーカー》
ホルベイン ウェザー&ニュートン クサカベ マッチ 月光荘 ラウニー シュミンケ レンブラント など
《初心者にお勧め》
ホルベイン 日本メーカーですので値段も安いですし、品質も良く色も豊富です。
こちらはホルベイン、ウェザー&ニュートンを主に使っています。 M画用紙ですが、発色も滲みも問題なくできます。 水彩は紙によっても粒子の広がり方、滲み方などが大きく変わるので、繊細で滑らかなにじみなどを表現したい、何度も重ね塗りをしたいなどがあれば、条件にあった好みの水彩紙を選ぶ必要があります。
アクリル絵具
アクリル絵具はアクリル樹脂で定着させている絵具なので、乾くと耐水性になります。 透明感があり、こってりと塗ると油絵のような表現にもなります。 また、絵具によってムラが出来やすくムラを利用して味のあるタッチを出すことも可能です。
《アクリル絵具の特徴》
アクリル絵具は、メーカー、商品によって硬さ、粒子の滑らかさ、透明度などが違います。
◇硬さ 硬い物であれば盛り上げるなど画面を荒らした表現ができ、柔らかい物であれば滑らかな画面作りが可能です。
◇粒子 滑らかなものは、水彩のように水多めで薄塗りをした時に粒子の広がり方が綺麗です。 透明度が高い絵具であれば、透明水彩のようにセロハンのような透けを出す表現も可能です。
《画材屋さんで選ぶときの基準》
アクリル絵具は、透明水彩のように薄塗りをすることも、油絵のようにこってりと塗ることも可能で、できる表現の幅が広い画材です。 なので、自分がどのように塗りたいのかを考えてその目的にあった絵具を買うことをお勧めします。アクリル絵具の場合は画面を荒らした表現も得意としているので、その場合は粒子の荒い安いものでもいいでしょう。繊細な画面作りを目的としているようでしたら柔らかく滑らかな粒子の絵具の方が綺麗に仕上がります。
《画材屋さんで置いてあるメーカー》
リキテックス ホルベイン ターナー ターレンス クサカベ ニッカー など
《初心者にお勧め》
リキテックス 色の伸びも良く使いやすく、アクリルの種類やメディウムも豊富です。 通常の硬さのレギュラータイプ、柔らかめのソフトタイプ、透明度の高いプライムと3種類、好みに合わせて選ぶことが可能です。
こちらはホルベインとターレンスの絵具を使っています。 アクリル絵具は、ザラザラした紙やメディウムを混ぜれば金属やガラスなど、様々なものに描ける画材なので、M画用紙は問題なく描写可能です。
アクリルガッシュ
アクリルガッシュはアクリル絵具と同じようにアクリル樹脂で定着させているものなので、乾けば耐水性になります。 アクリル絵具との違いは透明性です。アクリル絵具は透明色で艶のあるものが多いのに対して、アクリルガッシュは不透明でマットな質感です。ポスターカラーのように平面的な描写が得意なので、ムラも出来にくくフラットな作画をすることができます。
《アクリルガッシュの特徴》
アクリルガッシュもメーカー、商品によって、隠蔽率粒子の滑らかさ、割れやすさなどが違います。
◇隠蔽率 高ければ高いほど下の色の影響を受けにくいです。隠蔽率の高いものでも水を多く含めばその分透明になります。 水を多く含み着彩する際、粒子の滑らかなものは綺麗に広がります。
◇割れやすさ アクリルガッシュは絵具の品質や、乾ききらないうちに重ねたりすることで画面が割れることがあります。それを意図してやったわけでなければ見栄えが良くないでしょう。
《画材屋さんで選ぶときの基準》
色数の多さ、値段、手に入りやすさを重視していいかと思います。透明水彩と違い大量に使うことも多いので継続しやすいコスパや手に入りやすさは大事です。 色が切れて補充したくても滅多に置いてない画材であれば置いているところを探すことに苦労します。
《画材屋さんで置いてあるメーカー》
ターナー リキテックス ホルベイン クサカベ など
《初心者にお勧め》
ターナー 色がとにかく豊富です。絵本のように何枚も繰り返して描く場合、毎回混色して同じ色を出すのも大変です。近い色を買って好みに合うように微調整して使うほうが便利でしよう。また値段もお手軽、比較的どこでも置いているので追加購入もしやすいでしょう。 ひび割れを絶対させたくない方は、リキテックスで新しく開発されたアクリルガッシュプラスがオススメです。
こちらはターナーを使っています。 アクリルガッシュもアクリルと同様色んな物に描くことが出来ます。 M画用紙も問題なく描画可能です。 ただ紙以外に描く場合、アクリル絵具と比べると耐久が落ちるでしょう。
いかがでしたでしょうか。描いてみたい画材はありましたか? どんな画材で描けばいいのかわからないってときは、ぜひ参考にしてみてくださいね。
今回お話しした画材の違いは、簡単に違いをまとめたものなので、各画材には使い方や画材の合わせ方よって、もっと幅広い描き方ができます。 これをきっかけに絵を描くハードルを低くして、気軽に絵を楽しんでもらえたら嬉しいです。 もっと深く探求したい方は、一度アートスクール大阪へ体験に来てみてください。先生達が手厚くアドバイスしてくれますよ。
そして、最後に私事にはなりますが、2020年6月28日でアートスクール大阪を退職することとなりました。 気づけば5年もの年月を過ごしておりました。 絵本コースでは、本当に様々な事を学ばせて頂き、 生徒のみなさんのおかげでたくさん成長する事ができました。 みなさんが全力で制作に励む姿に、何度も励まされました。 最近ではみなさんの努力が花開き、嬉しい報告をいっぱい聞くことも出来ました。 嬉しい経験の数々、本当にありがとうございます。
これからもみなさん、制作を続ける中で、 上手くいかないことや悩む事、たくさんあると思います。 そんな時は、何に悩んでいるのか、何が気になっているのか、どうしたら改善できるのか、良いと思っている作品はどこが良くて、自分はどう作りたいのか。 ぜひ立ち止まってメモを取りながら具体的に考えてみてください。
悩み失敗することは決して悪いことではありません。 寧ろ、悩み失敗する事によって、新しい小さな発見に出会う事ができます。 その小さな発見の積み重ねは、気づける事をどんどん増やしてくれます。
絵本作家さんは90歳を過ぎても現役で活躍できるような、年齢に縛られないお仕事(趣味)です。 歳を重ねる事よって、環境の違いによって書ける内容も変わります。 そこが絵本のとっても面白いところ。 みなさんも、自分で辿り着いた答えを信じて。 一歩一歩前へ進んでいってくださいね。
今まで本当に楽しい時間をありがとうございました。 こんな状況なので、みなさんどうぞ体に気を付けて。 みなさんの活躍を陰ながら応援しております。
生川 彩
- Profile
- ‘13 神戸芸術工科大学デザイン部 ビジュアルデザイン学科絵本コース卒
ギャラリー葉「ずーたのおもちゃの箱」
‘14 ギャラリー葉「ずーた&M&Nのおかしの国」
‘15 ギャラリー葉「ものがたり展」 - Message
- 楽しく自由な絵本が好きで大学で絵本を学びました。最初は不安に思うこともあると思いますが、不安が楽しみに変わるよう学んだ知識と経験を生かして、みなさんが納得のいく作品に仕上がるよう共に考えアドバイスします。「やりたいこと」を大事にして、楽しく絵本を作りましょう!
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