絵本づくりの考察 7.「序破急(じょ・は・きゅう)」
絵本と表現コース以前のブログで「起承転結」について考えましたが、今回は、それとは別に「序破急」という舞楽や雅楽などの構成方法が起源になっている物語の構成を考えます。「起承転結」で置き換えて考えるのならば、「起・承」が「序」、「転」が「破」、「結」が「急」と一般的に捉えられています。
1「序」は、入口
お話の状況を説明し、読者を引き込む「つかみ」です。長々と説明はせずに、わくわくしながらページをめくってもらうことを考えます。
2「破」は、展開
盛り上がりに向けてお話が進行します。解決の糸口が見えたところで、「結」へと急展開することも多いです。
3「急」は、締め
「破」で起こった変化がおさまり、結末をむかえます。ここで上手に納得させると、面白かったと思えます。
例えば、「ゴムあたまポンたろう」長新太・作/童心社
ページを開くと、いきなり男の子がゆっくりと飛んできます。もうたまりませんね、普通に考えたらこんな大変な状況はありません。でも、当たり前のように話は進みます。このタッチの絵だから納得する部分もあるのですが、次はどうなるのと興味がわくので「つかみ」は完璧です。だからその後の展開では、どんなに破天荒な出来事がおこっても、もう大丈夫なのです。
例えば、「かとりせんこう」田島征三・作/福音館書店
蚊取線香の煙で蚊がぽとんと落ちる、状況描写で始まります。主人公はいませんが、リズミカルな言葉と煙で落ちるモノが次々と現れ、繰り返しはだんだんと不思議な世界いにつながり、結末の「急」の部分で気持ちよく裏切られる面白い絵本です。
ファンタジーや不思議な世界は、もうすでに存在するものとして始まることで、もたもたせずに納得してもらいやすくなります。ご丁寧に「どこそこに、なんのなにがしが、どうのこうして暮らしておりました。」という起承転結の「起」があることで、世界はわかりやすく伝わりますが、全ての絵本に絶対必要かどうかは別の問題なのです。
絵本コース講師/中田弘司
絵本づくりの考察(各記事は、下記をクリックしてくださいね)
1.「起承転結」
2.「擬人化」
3.「シンプル」
4.「文字の表情」
5.「普遍性」
6.「目的」
中田 弘司