絵本づくりの考察11. 「タイトル」

以前のブログでお伝えしたように「絵本コース」は、「絵本と表現コース」に名前を変えました。
★以前のブログはこちら→『「絵本」コースは 「絵本と表現」にコース名を変更します!
「絵本づくり」には「表現」を広く考えることも必要と考えてのコース名の変更です。

まさに「名は体を表す」です。つまり「名前がそのものの実体を表している」ということで、それは絵本の「タイトル」も同じです。どんな内容なのか、何が描かれているのか?が伝わることが必要最低限の条件として、プラス読者が興味が湧くように、そしてネタバレしないようにと考えます。

絵本にはどんな「タイトル」があるのかと「Pinterest」という画像を軸に情報を探せるSNSを使って「絵本」を検索すると、たくさんの絵本の表紙画像が出て来ます。そこで絵本の「タイトル」をよく見ると、不思議なものや面白いものがたくさんあります。
その中から気になる、引っかかりのある「タイトル」を少しピックアップしてみると、

「おいしそうなしろくま」
「はみがきれっしゃ」
「かたつむりタクシー」
「ひみつのきもちぎんこう」
「いちにちじごく」
「たいへんなひるね」
「もりのおふろ」
「ひゃくにんのおとうさん」
「やまのディスコ」
「チョコレート戦争」
「どろぼうがっこう」
「おばけとしょかん」等々、

普通では使わない言葉の組み合わせ、対義語や反対語のイメージの単語がセットなっている場合が多く、俗に「シュール」と呼ばれる表現がたくさん使われています。
「シュール」というは言葉は元々「シュルレアリスム(超現実主義)」というフランスの文学・芸術運動の「無意識の探求」なのですが、現在では日本独自の表現となり当初の意味からは離れ「現実離れした奇抜な表現」というニュアンスで定着しています。そんな「シュルレアリスム」の手法の1つに「異なった環境に置くこと」日常から切り離した意外な組み合わせを行うことによって、受け手に強い衝撃を与える手法があります。有名な「解剖台上のミシンとこうもり傘の偶然の出会い」というフレーズがありますが、まさに絵本のタイトルにはそんな表現が溢れています。

またアイデア出しの方法としても、不思議な組み合わせの言葉を作り、そこから、お話のイメージを広げるのも面白いです。
例えば「いちにちじごく」という絵本がありますが「〇〇じごく」として〇〇の部分を考えるだけでも、いろんな絵本ができそうです。「あかちゃんじごく」「にくまんじごく」「おふとんじごく」等、組み合わせによっていろんなイメージは広がります。どんなお話が浮かびましたか?

 

同じように教室にある絵本から、タイトルの面白い絵本を探してみると、

作・内田麟太郎、絵・降矢なな、発行所・偕成社の
ともだちや」がありました。

魚屋、八百屋、〇〇屋といったお店やさんの名称である「や」と「ともだち」がくっついたタイトルです。
普通に考えれば「友達」が商品のお店「友達屋」ということですが、どうやら友達を売っているのではなく、友達になる1時間いくらのサービス業のようです。
これだけ考えてもどんな内容だろうかと興味が湧きます。

もう一冊は、

作絵・かがくいひろし、発行所・講談社の
「おもちのきもち」がありました。
表紙を開いて表2には「おもちだって、いろいろなやみがあるんです。」と書いてあります。
リズムよく韻を踏んでいますが、なんだろうと興味が湧きます。

こんな風に、「タイトル」で興味が湧く、ひっかかりがある、ということは、本を手に取ってもらうためには重要な要素です。
もちろん絶対的な方法ではありませんのが、「タイトル」を考えることは、販売促進の一つの方法としても効果的です。

最後に、絵本づくりには、はじめに「タイトル」を決めるという方法もあります。
想像のままにお話を作ってしまうと、妄想が広がりだんだんと脇道に入ってしまって、結局何が言いたいのかがわからなく場合があります。
それは絵本内容の軸がブレてしまっているからです。先に「タイトル」というゴールを設定して、それを基準にお話を作るのも一つの方法です。

そんなふうに考えると「タイトル」も絵本づくりの重要な要素として大事にしたいですね。

絵本と表現コース講師/中田弘司

 

絵本づくりの考察(各記事は、下記をクリックしてくださいね)

  1. 1.「起承転結」
  2. 2.「擬人化」
  3. 3.「シンプル」
  4. 4.「文字の表情」
  5. 5.「普遍性」
  6. 6.「目的」
  7. 7.「序破急(じょ・は・きゅう)」
  8. 8.「キャラクター」
  9. 9.「オノマトペ」
  10. 10.「判型」

 

中田 弘司

中田 弘司
Profile
制作事務所勤務デザイナーを経て、1989年よりフリーランス。
今までに幼児向け雑誌絵本等にて100話以上のお話の挿絵制作。
絵本をはじめ、「ビッグコミックオリジナル・増刊号」(小学館)表紙イラストや、
月刊誌「大阪人」にて歳時記や町歩きの画文の連載等、
壁画からキャラクターまで多様な作品を制作。
東京・大阪・神戸にて個展多数。主な絵本に「ぷぅ」( 作:舟崎克彦/ポプラ社 )がある。
Message
目には快感、心が楽しみ、気持ちを遠くに運ぶ
絵本やイラストを目指しています。
仕事での経験を生かし、一緒に考えながら、アドバイスをします。
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