絵本づくりの考察 1.「起承転結」
絵本と表現コース絵本の構成を考えるとき、「起承転結」を考えながらお話を膨らませると、つくりやすくなります。物語は「起」で始まり、「承」で動き出し「転」で「山場」を迎え、「結」で「締め」るという流れがあれば、物語にはメリハリが生まれ、伝わりやすくなります。
というのが一般的な考えです。が、起承転結と言えば四場面。四コマ漫画作家の「いしいひさいち」さんのwikipediaのページを見ると「いしいによれば、そもそも四コマ漫画に起承転結というセオリーはなく、あるとすれば観念的な読者の認識のフレームではないかとしている」と書かれています。つまり、「起承転結」があれば、読者側が認識しやすいのであって、作者側が「起承転結」を守り、縛られる必要はないということですね。
まして「絵本」は11や15場面で展開される事が多いので、「起、承転、承転、承転、結」というふうに大小の山場がいくつかあったり、絵本全体を読み進む際のリズムとして、歌のようにAメロ、Bメロ、サビというように変化と繰り返しの心地よさも、ひとつの方法として考える必要もあります。
また落語家の「桂枝雀」さんは、著書「らくごでDE枝雀」(ちくま文庫)内で『赤ちゃんの笑顔は何度見ても「かわいい」と感じます。つまり同じストーリーを繰り返しても喜んでもらえるのは、この「情的なもの」のおかげと思う』と言っておられます。絵本の場合の、繰り返し読みたくなる要素「情」とは何かと考えると「共感」や「ページをめくるワクワク感」「絵の中で遊ぶ楽しさ事」等々、読者の気持ちに添う事が重要になり、何度も読み返してもらうためにはストーリーだけでなく「情」の部分も考えどころです。
そして、お話の締めの部分「結」や「オチ」が上手く収まらないと読後感が気持ち悪いのです。「結(ケツ)」とは物語の「むすび」の事であって、文字通り「お尻」のことでもあります。「結」と「オチ」は同様に思われ、特に関西は会話でも「オチ」のない話はバカにされますが、いろんな「結」があって大丈夫です。物語の最後に「納得」を与え、気持ちよく本を閉じてもらう事が役目です。例えば昔話は、どんなにひどいことがあっても最後に逆転し「めでたしめでたし」と終わると、聞いている方は納得してしまいます。
という事で、絵本づくりは「起承転結」だけにこだわらず、何度も繰り返し読みたくなる「共感」と、読後の「納得」が重要ということです。
~おしまい~
絵本コース講師 中田
中田 弘司
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