版画の“サイン アンド ナンバー(signed and numbered)”について
版画コースこんにちは。
今年は桜が長く続いたと思っていたのに、すっかり新緑の季節になりましたね。
版画コースにとって、春は海外の公募展ラッシュの時期!
公募展に出品される方は、締切りに追われながらも充実した制作を進められてました。
今回は、版画の“サイン アンド ナンバー(signed and numbered)”についてお話します。
公募展に出品するなら絶対に通る道でもありますし、なにより刷り上がったものを作品として作者自身が証明する大切な制作工程です。
版画作品を目にした時、イメージの下部にこんなもの見たことことありませんか?
“サイン アンド ナンバー(signed and numbered)”とは、これ↑のことです!
では“サイン アンド ナンバー”とは何が書いているのかというと、
・エディション:限定部数(1/10など)
・タイトル
・サイン
を鉛筆で書いています。
1860年頃からヨーロッパで版画のオリジナル性を証明するために、書かれるようになりました。
日本でも1920年頃の版画作品には書かれています!
そして1960年に、「オリジナル版画」の定義として「署名・限定部数と一連番号(1/20,2/20…)をつけなければならない」(ウィーン第3回国際造形芸術会議)と宣言され、世界的に現在の形式が確立されました。
“サイン アンド ナンバー”の中で、あまり馴染みがないのは”ナンバー”(エディション)の部分だと思います。
エディションとは、
限定部数+一連番号から成るナンバリングのことを指します。
版画は、同じ作品が複数できる技法ですので、その芸術性を保持するために「限定○枚」と作品枚数を作者が宣言する必要があります。
例えば同じ種類の紙の上に、同じ色で刷られた作品が20枚あったとすると、1/20,2/20,3/20〜20/20と一枚ずつにナンバリングをします。
大体刷った順に1/20,2/20…とナンバリングします。
そうすると、「この版画作品は全部で20枚刷られていて、その内の○番目の作品なんだな!」とわかるワケです。
「○番目の作品」も版種によっては番号が若い方が高かったり…と同じ版画作品の中でエディションの限定部数で作品価格が変わったりする場合もありますが、基本的には同じ作品として扱われます。
または、同じ紙の種類の上に同じ色で刷られた作品が30枚あり、作者自身もとても気に入っているので手元に少し置いておきたい!とするならば、
エディションを1/28,2/28〜28/28と記し、残りの2枚を”A.P."と記しておくこともあります。
”A.P."とは”Artist's Proof"の略で、「作者が保有している版画作品」を意味します。
およそ限定部数の10%を限度としていてますので、"A.P."の数も制限されます。
"A.P."のようにエディション以外に記される例としては、英語式、仏語式があります。
ざっくりと英語式は下表のようになります。
エディション以外の作品の在り方を示めしています。
もし見かけたら、そういう作品なのね!となるポイントです。タイトルや作品のイメージ以外からも読みとめる版画ならではの重要な作品情報のひとつです。
版画作品のイメージの下に何気なく書かれている“サイン アンド ナンバー”
私も最後に鉛筆で書くときは、いつも緊張します。
かっこよく同じようにサインがなかなか書けない…!
作者が作品としてオリジナル性を証明するものですから、“サイン アンド ナンバー”も立派な作品の一部!
緊張や失敗もあると思いますが(私だけかな?)、素敵に記せるようになれると、より一層イメージも凛々しく見えたりするものですね。
そんな版画にとっては必要不可欠な“サイン アンド ナンバー”のお話でした。
版画コース
平田
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