版画コース・ブログ講評 2月分

こんにちは~!
版画コース講師一同です!
寒い日々が続いておりますが、皆様元気にお過ごしでしょうか?
今月も笑顔でやっていきましょーー!

2月ブログでは、以下の2名の講評を行います!
・藤江千恵 さん
・よこたちえ さん

以下のマークがこの講師です。
谷山 :谷山文衞 講師。シルクスクリーンを主に指導しています。

山内:山内あすな 講師。銅版画を主に指導しています。

平田:平田彩乃 講師。木版画を主に指導しています。

作者: 藤江千恵
題名:海の家
制作年:2021
版種:銅版、紙版
コメント:
銅版画に紙版を加えることで、銅版のみとは違うニュアンスを出せればと思いました。
紙版のインクの濃度が刷るたびに違ってしまい、3色のバランスを取るのが難しかったです。
よろしくお願いいたします。

谷山
人柄なのか、優しい感じの作品ですね。窓枠の中の少女が半転されていますが、蛸の画像は反転になっています。寓話なのか夢なのでしょうか。
人、縫いぐるみ、蛸、カーテン、戸など、対になっているものが技術的な問題なのか、若干の違いで描かれています。違いが出るあるいは違いを出すことは少なからずイメージされていたと思いますが、場合によっては効果的だと思います。この作品では必要でしょう。
紙版がどれだけの効果があったかは判りませんが柔らかな効果をもたらしたのかも知れませんね。
使用色はいわゆるプロセスカラーでマゼンタ抜きの状態です。かすかにマゼンタが感じられればもっと画面にボリュームが生まれるように思います。この作品から感じたのは、ソフトグランドを使った技法を習得されればもっと作品の幅< が広がるように思いました。

平田
銅版+紙版で制作された作品ですが、うまくマッチしていますね。
青色の銅版でソフトグランドを用いてるのでしょうか?柔らかなトーンが紙版と調和されて、お互いを主張しすぎないところで留めておいてくれているようですね。
制作で四苦八苦したとのことでしたが、できあがった作品を見ると銅版、紙版それぞれのニュアンスの違いをみせながらも、調和のされた画面になっていると思います。
モチーフもユニークで藤江さんワールドも全開ですね。
タコや寝ている少女とクマのぬいぐるみ、アイビーのような植物と同じモチーフがダブルで配置されています。
ダブルで配置すること自体は悪くありませんが、全て同じくらいの大きさ、同じ技法を使った描き方をされているので、均一的な画面になっています。
大きさや技法の使い方を少しかえてみると、より入り込める画面になりそうです。
例えば扉の中の寝ている女の子は青系の版だけで描くとか、タコの片方は大きめに描くとか。
藤江さんの世界観(描きたいものや空気感)はそのままに、主題となるモチーフに偏らせる意識を持ちながら画面を作っていくといいかもしれません。
銅版と紙版の両方使いは成功していると思いますので、この調子で次はより入り込める作品を期待しています!

山内
私はこの絵を見ていると、浜辺で光にあてて眺めていたシーグラスを思い出します。色と、ちょっとザラザラした感じが想起させるのですね。
対称の双子の少女を右上寄りに置いたのが面白いです。左右のタコ・左右の窓の開き方の違いにも構図の良いリズム感があります。ただ、タコは扉にくっついている設定だと思うのですが、左のタコはもう少し大きく、扉から足がはみ出した方がのびのびと自由になって面白いでしょうか?私だったら、下か左かどちらかの余白を1 ㎝ほど詰めて、壁に這う植物をもっと長く描くと思います。
指導中によく言うのですが、音楽だけでなく、絵にもリズムというものがあります。絵のリズム感を覚えると、構図は良くなります(もちろん、音楽と美術のリズムは別物です。
私は今でも木琴を叩く悪夢を見るくらい音楽のリズム感?がありません)。藤江さんのように最初から上手な人も居ますし、指摘される事で上手くなる人も居ます。
構図が気になる時は、講師に訊いてみてくださいね。

↑ちなみにこの作品は、去年、芝田町画廊さんで開催された「吉田杯」にて藤江さんが展示していた作品です。一つの版を、色変えながら4回転させて摺る方法で作るのですが、どうやったらこんな絵が思いつくんでしょうか?
吉田杯では、この作品は「買い取り賞」を受賞していました。素晴らしいです!
これからもどんどん展示していきましょう!

 

作者: よこたちえ
題名:Year of the Tiger
制作年:2021
版種:木版
コメント:
流れる毛並みと美しい瞳を表現したく、制作しました。
今年に虎のように自由に行動ができる年になることの祈りを込めた年賀状です。

山内
始めに驚愕的な話をさせていただきますと、この作品は「無料体験」の時から作り始めました…!さらに、2コマ(6時間)で最終仕上げ(彫の修正、色の調節)と80 枚を摺り上げました…!!
年賀状に間に合わせる為、急いで彫って摺りましたが、もう少し時間に余裕があれば、茶色版を髭の点々の部分や全体に使えてさらに良い絵になっていたと思います。
目は上手に光を入れる事ができましたね。文字も綺麗に彫っています。普通の初心者は文字を彫る事ができません。これで「美術はしていなかった」と言うので、ビックリです。
現在は銅版画をしていますが、飲み込みが早いので、おそらくすぐに上達すると思います。
この講評の2週目があったら、ぜひまた提出してほしいです。

平田
よこたさん
力強い虎ができあがりましたね!
口元がキュートでもあり、雄々しい様子も表現できています。
文字もほぼ下書き通りに摺れています。スクールでの初めの作品としては素晴らしい出来です。
個人的には、茶色で摺った版は濃紺とか青系でまとめた方が、よかったかな。と思いますが、それも好き好きなので。口元のキュートさは茶色の方が際立ちそうですしね。
この虎のように自由に行動ができるようにとの祈りも、きっと叶うのではないでしょうか。
このハガキサイズの作品からもよこたさんのパワフルさは感じられます。
次はもう少し大きいサイズの作品にチャレンジして、年賀状とかではなく、より自由に好きなテーマで取り組んだ作品を見てみたいです。

谷山
こちらも優しさを感じる作品ですね。
コツ版?茶版の部分が少なく、中央部が空いているので、若干画面が間延びした感があります。水性インクで色の強さが出し難いこともあると思います。黄版にもう少し刀が入ってもよかったかも知れません。最も気になるのがコツ版の右下のカスレです。見当が邪魔をしたのかも知れませんが、ここは確りと摺って欲しかったです。それだけで随分作品の印象が変わったと思います。
毛並みの表現に繋がるかは判りませんが、黄版と青版は髭と眉毛?以外、基本上下(縦)の彫りだけの表現になっています。面白い表現ですね。文字も良いフォントになっています。色違いの文字も見たいですね。
ともあれ、心温まる、穏やかで優しい良い年になりそうな年賀状をありがとうございます。

このブログ講評、他コースの生徒さんからも「面白く読んでいます~」と言っていただけて、好評なようで嬉しいです。
しかし、ここに作品を出してコメントをもらうのは、勇気が要る事だと思います。
まだ提出していない版画コース生にも「出しませんか~~!?」と訊いていますが…、もうそろそろ打ち止めかもしれません!?

版画コース講師一同

 

 

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