ゲルハルトリヒター展、平岡靖弘展、私の工房、彦坂敏昭展
版画コースエスパスルイヴィトン大阪でゲルハルトリヒター展を見てきました。案内係の人に付き添われて5階のギャラリーまで連れて行ってもらいました。何かリッチな気分になり、一瞬のセレブになった気分でした。
ゲルハルトリヒターは私の大好きなアーティストのひとりですが、やっぱり素晴らしいです。例によって何点かごとに制作年代や作風の違う作品が並び、写真を使ったもの、エナメルペイント、油彩画などがありました。それぞれがイメージに応じた素材を利用していて変化に富んでいます。写真やSNSでは味わえないものがあり、新しい発見もありました。特に油彩画はいろんな要素が組み込まれていて、面白かったです。
作品が制作された時代背景や当時のアートシーンなどを思い浮かべるとより興味深いです。
これらの作品はルイヴィトンがコレクションしている現代美術を年2回、東京と大阪のみで公開しているそうです。(コレクションはギャラリー内のモニターで映写されています。)
プラダ、カルティエ、シャネル、ディオールなども積極的にやっていますが、企業や富豪が美術品の収集をしていることはよく聞きます。収集品を一般公開することは社会貢献のひとつとして重要なことです。(企業戦略の側面もありますが。)何はともあれ我々が気軽に目にすることができることは有難いことです。
独立美術協会の平岡靖弘展に立ち寄りました。平岡さんには若い頃、随分お世話になりました。70代半ばにして相変わらず精力的な制作活動をされています。個展会場で平岡さんとお話をしているところにお客様が来られて、デッサンについて論じ始められました。よくある受け売りの古典的なデッサン論のようでしたが・・・。私にはその方が何を見に来られて、何を見ておられたのかさっぱり分かりませんでした。私は先に帰りましたが、ひとこと言っておくべきだったのかも知れません。(平岡さんには申し訳なかったです)
知人の個展の帰り、ラバー・ソールの写真集が見たくて紀伊国屋に立ち寄ったのですがありませんでした。当たり前ですが話題が下火になると店先には置いてもらえないんですね。最近話題の森山大道や奈良原一高などは並んでいました。
「group81〜94.」というグループ展がありました。展覧会の構成をしておられた高橋亨先生がお亡くなりになった事もあり、今回で終了することになりました。出品者は林 康夫、中井克巳、山中嘉一、中馬泰文、木村秀樹という各氏です。私が美術に関わるようになってから現在まで、その時々に貴重な勉強をさせて頂きました。中井先生、山中先生、高橋先生はお亡くなりになり、ひとつの時代の終焉を感じますが、林先生は90代、中馬先生は80代、木村先生は70代になられていますが、益々精力的に制作されていますし、それぞれ陶芸界、美術界、版画界の重鎮としてご活躍しておられます。ちなみに中馬先生のアーティストトークが兵庫県立美術館のYouTubeで配信されていますので是非御覧下さい。必ず参考になると思います。
(いろんなところで様々なアーティストトークが行われているのでチェックしてみて下さい。)
私の工房でシルクスクリーンによる絵本の原画を制作している女性作家がいます。様々な技法で原画を制作しているのですが、個展はともかく、絵本はどの出版社からもシルクスクリーンでの原画を依頼されるようです。恐らく彼女らしさが最も出ているのではないでしょうか? 先日、彼女の絵本を出版している出版社の編集長が制作風景を取材に来られました。私の知っている出版社の何社かの中で女性の編集長は初めてでしたが、物腰の柔らかいとても良い感じの方でした。勿論、良い本を作るという姿勢は一貫していますが。編集長はとにかく褒めまくるのです。(こんなに優しい編集長はめずらしいらしい)作家もポジティブな方で、ノリノリで制作する人です。ミスはミスとして自覚できる人なので、細かなミスや技術なども聞いてきます。そんな人なので浮つくことはありません。安心して2人の会話を楽しみました。そんな2人がワイワイ言いながら制作していきます。よくもまあそこまで褒め言葉が出てくるものだなあ・・・と感心してしまいました。編集者と作家の関係は何かと難しいこともありますが、良いお付き合いを続けて頂きたいと思っています。
私の工房で彼女が使用している刷台は、お世話になった鈴鹿芳康氏(現在、清水寺で展覧会が開催6/16~6/21されている)から譲り受けた刷台で数十年もの間大切に使ってきた物です。
京セラ美術館では彦坂敏昭展が開催されています。この展覧会は京セラ美術館の「ザ・トライアングル」という企画展で、京都で活動する若手美術家達を紹介する展覧会のひとつです。彦坂君は私が京都造形芸術大学(現京都芸術大学)で非常勤講師をしていたときの生徒で、人柄も良く、大変優秀な美術家です。京セラ美術館に行かれることがあれば、是非見てあげて下さい。
他にもお世話になっている先生や知人の個展など、気になる展覧会や見ておくべき展覧会は幾つも開催されています。画壇の展覧会やモジリアーニ展なども開催されていますが、本物を見ることで時代の息吹や思想、技術、素材などを垣間見ることができます。是非出かけて様々な表現に触れ、制作者との会話を楽しんでみて下さい。
谷山 文衛
- Profile
- ‘10 佐伯俊男展に参加(DA-END/PARIS)
‘11 「日本のイメージの多様性」展(USA)
‘12 V Biennale Internazionale Mail Art2012(ITALIA)
‘13 International Mail Art Exhibition at the Akademie der Kunst.Berlin(GERMANY)
‘13 第4回 NBCシルクスクリーン国際版画ビエンナーレ展(美術家連盟画廊/東京他)
‘15 日米美術交流展(金沢湯涌創造の森/石川)
美学出版刊行『戦後関西版画史』の「関西の版画工房」を執筆
大阪芸術大学、京都造形芸術大学元非常勤講師
宝塚造形芸術大学元特別講師
刷り師として国内外有名作家の版画制作に携わる。 - Message
- ストレスの溜まる現代社会で、
ひとときの精神の解放を共有したいと思っています。 - ArtWorks