(登場人物のごしょうかい)
T:Tちゃー 絵本の先生をしながら絵本を作っている
P:Pくん Tちゃーといっしょに絵の勉強中
T:今回は絵本コンクールの話をしようかな
P:やったー ちょうどコンクールに出そうと思てる絵本を作ってるねん
T:Pくん、絵本に限らず、漫画やイラスト・小説でも、コンクールにで賞を取るのはどんな人が対象になると思う?
P:そら 才能があって、いい作品を描いて、多少の運もある人とちゃうか
T:もっと大事なことがある
P:?
T:作品をコンクールに出した人や
P:な
T:いくら才能があって、いい作品を描いても、運があっても、作品を出さんかったらぜっったいに賞は取られへん。
これ、結構大事なことやねん。Tちゃー自身も経験あるけど、コンクールに出すのは正直怖い。誰でも怖い。
P:せっかく時間かけて作った作品が評価されんかったら、いややなあ
T:そうやねん。特に絵本は制作に時間がかかる。半年近く、いやもっとかけてる人もたくさんいると思う。
頑張った人ほど、コンクールの結果発表は怖くなる。
P:けど、頑張ってんから出さな!
T:そうやねんけど、大きいコンクールやったらその頑張った作品が何百も応募される。でもその中で受賞するのは多くても10作品あるかないかや。
そう考えると、「もっと書き込んだ方がええかなあ」とか「これそもそも面白いんかなあ」とか、色々考えてしまって、締め切りが来てしまう。
P:そして出せない。
T:そう
P:それじゃ、Tちゃーはどうやって賞を取れたん?
T:Tちゃーは、何回も落選して、2回受賞させてもらった。両方経験したからわかるけど、落ちた作品と入賞した作品の違いってあるねん。
P:落ちた作品は何かが足らんかった
T:何と思う?
P:うーん、画力?構成?作話の魅力?
T:まあ、そういうことかもしれんけど、ズバリ「自信」や
あかんかった作品の時って、出来上がってもなんかモヤモヤっとした不安があるねん。話もよく練り上げたし、絵も丁寧に仕上げた、理屈では「いい作品」と思ってるけど、
一方でなんか納得しきっていない。「ここ頑張ったの審査員の人はわかってくれるよね」とか過去の受賞作品と見比べたりして、「これが受賞するなら・・・」とモヤモヤ考える。
P:じゃ、受賞した作品の時は、
T:完成した作品が好きになる。他人の評価なんか受けなくても、「自分はこの作品描いた!」ってことに満足する。
コンクールに出す気分も「賞はいいから(本当は欲しいけど)面白いからぜひ読んでみて」てな感じ。だから、梱包して宅配屋さんに持ち込んだ時点で
賞のことはすっかり忘れる。
P:そんな絵本描いてみたいわ
T:そやろ。実際コンクールに出したこと、ほんまに忘れて、受賞の電話がかかってきた時は「なんやこの見たことない市街局番、押し売りかいな」
みたいな応対をしてしもうた。
P:気をつけなあかんなあ
T:絵本作家さんの中には自費出版でデビューされた方もいる。多分その作家さんも自分の作品に自信があったんや。それにその作品が好きやったんやと思う。きっとそういう作品はコンクールに出しても賞を取る。
T:絵本作家になる道は「コンクール受賞」や「持ち込み」や「自費出版」とかあるけど、認められる絵本は、どの道そう違わへんのやないかなあ。
描いた本人が「好き」「欲しい」ってなる作品じゃないと、コンクールも出版社も欲しがらないと思うよ。
P:そうか!じゃ、ぼくTちゃー好きやから、Tちゃーの絵本描こう!
T:えっ ちょっと違うけど・・・
絵本コンクールは出版社以外の団体も開催しており、主催者により募集する作品の趣向は異なります。
また、コンクールには大賞以外にも最優秀賞・特別賞など様々な賞があり、受賞すると書籍化されるなど、絵本作家として活動の幅を広げるきっかけになるため、絵本コンクール受賞は、絵本を作る多くの方が目標としています。
しかしながら絵本コンクールに(これは他の分野でも同じですが)こうすれば必ず受賞できる、という法則はありません。
では、コンクールで受賞するためには、闇雲に描くしかないのでしょうか。何か特別な才能がないと受賞者にはなれないのでしょうか。
筆者も以前は、そんな思いを抱えながら、絵本教室で作品を制作する一人でした。
筆者自身は、コンクールへの近道も、秘訣も知りません。
ただ、落選と受賞の両方の経験を通して、それぞれの作品を仕上げた時の心持ちを振り返った時、そこに何かしらのヒントがあるのではと思い、皆さんに紹介させていただきました
高橋 禎司
- Profile
-
京都工芸繊維大学 工芸学部 造形工学科卒
建材メーカーでデザイン開発に従事
その後、絵画、絵本作成に取り組む
'19 有田川絵本コンクール佳作入選
'20 武井武雄記念日本童画大賞優秀賞
- Message
-
絵本作りに特別な才能は必要ありません。
ただ作品を作り続けることで、今まで見えなかったものが見えるようになったり、
より深く自分の伝えたいことが、伝わるようになるようです。
そして作り続けられる人は、楽しめる人です。
人から褒められて楽しい、上達するのが楽しい、ただただ絵を描くのが、 物語を考えるのが、それだけで楽しい。どれでもいいのです。
「よく知っていてもそれを好きなものには敵わない。 それを好きでも、それを楽しんでいるものには敵わない」 論語のことばですが、何かを創作する人には特に当てはまるように思われます。
講座を通じて皆さんが「楽しめる」お手伝いができれば幸いです。 - ArtWorks