こんにちは!
アートスクールオンライン講座イラストコースでイラストレーションとデッサンの講座を担当 させていただいている須藤です。
私は普段アナログ画材やiPad対応のイラストアプリ「プロクリエイト(Procreate)」を使用し ながら「ストーリー性やコンセプト」を大切にしたイラストレーションの制作をしています。
講座に来ていただいた受講者さまには、絵に関するいろんなお土産(情報や技術やモチベーション)を持って帰っていただきたい!と思い日々授業をさせていただいています。
現在開講している講座は以下の3つです。
絵の具を使った描き方の解説、実践メインの
「透明水彩・アクリルで描くイラストレーショ ン」イラストや絵本に取り組む方、初めてデッサンされる方向けの
「はじめてのデッサン〜あな たのイラスト創作を支える基礎〜」考え方や魅せ方に焦点を当てた
「あなたらしく伝えるイラストレーション」
もうちょっと詳しい内容を知りたいかも…と興味を持ってくださった方のために、 今回自主的に描いたクリスマスカードの制作の様子をお見せしながらしながら、普段イラスト レーションの講座2つで受講者さまたちにお話ししている内容を少しだけご紹介いたしますね。
1.イラスト制作に必要なストーリー性とコンセプトの大切さ
まず最初に、こちらが先日仕上げたクリスマスカードのイラストです。
使用画材は透明水彩とアクリルガッシュ、透明性のあるアクリルカラーと色鉛筆です。
今回はこの作品が完成に至るまでの流れをご紹介していきます。
〜ラフ制作〜
(1)コンセプトの明確化:描きたいイラストの目的やイメージを明確にする
まず「クリスマスカードを作りたい!」と思いついたところから始まりました。 そこからイメージをどんどん明確に膨らませていきます。
「どんなカードだと手に取ってくださった方に喜んでいただけるかな?」
「優しくて静かで、少し寒さを感じる夜の絵にしたいな」
「イエスキリストの誕生にまつわるイラストにしよう!」
こんな感じで頭の中でいろんな考えを巡らせて、イメージを明確にしていきます。
(2)構図の検討: 要素のバランス・配置などを検討し効果的に伝える
なんとなく描き始めてしまうと、あとで辻褄が合わずに自分で苦しむパターンがあると思うの ですが(絵を描く方なら経験のある方が多いと思います!
私の講座では、そうならないために描く前にどんな絵にしたいのか、状況やストーリーや温度 感・色合いをしっかり設計して描くことをおすすめしております。
(3)キャラクター表現:特徴や感情を表現して魅力と深みを与える
まず、最初に描いたラフはこちら。
※ラフはプロクリエイトですが、本番はアクリルメインで着彩する予定です。
キリスト教色があり、静かな夜のシーンを描きたかったので、状況としてはキリスト生誕の夜 を描きました。
ただ、あまりにもそのままを描くと自分が思うキリスト教色よりも強くなってしまったので、 キリスト生誕劇を演じる天使役の子どもを描きました。
天使の羽をリアルな感じではなくおもちゃっぽく描くことで劇らしさを出しています。
キリスト生誕の瞬間を感じ取る天使役、というイメージです。
(4)簡潔なラフスケッチ: アイデアを素早く捉え、基本的な構成を整える
ラフを描いてみたら、「背景の色が夜っぽくないかも」と気がつきました。
というわけで背景を変更します。
背景の色を変えてみたところ、夜らしくはなりましたが今度はクリスマスらしさがないことに 気がつきました…!
背景の色をネイビーから緑に変えて、仮の文字も配置してみます。
色味はだいぶクリスマスらしくなりました。
ですが今度は、ポーズから意図や意味を感じられず、変更することにしました。
(5)フィードバックの取り入れ:他人の意見参考にしてブラッシュアップ
上を向くことで当初の生誕を「感じ取る」ポーズから、次の段階である生誕を「知らせる」 ポーズにしました。
三賢人が目指すベツレヘムの星に視線を集めるような構図にもなっていま す。
ですが、今度は天使の持つステッキのようなものが魔法の杖に見えるとのアドバイスを家族か ら受け、確かにその通り…!
と思い、星型の杖をベルに変更しました。
※ちなみにいつもラフ完成の直前には、第三者にぱっと見の印象を教えてもらうように心がけて おります。
これでラフの完成です。
ここで修正を加えることで「キリスト生誕の夜、天使が三賢人にベルの音でその誕生を伝え た」という生誕劇のお話に沿った内容のラフが描けました。
途中で貴重なアドバイスをもらったおかげでより良いラフが描けたように、 絵の制作では他者からアドバイスしてもらってはじめて気がつくことがたくさんあります。
授業では私がその役になって、受講者さまの絵にアドバイスすることを心がけております。
2.デジタルで下書きをした絵にアナログ画材で着彩する
〜本描き〜
そしてラフが完成したので本描きに入ります。
今回は透明水彩とアクリルガッシュ、透明性のあるアクリルカラーと色鉛筆で制作していきま す。
まずはアクリルガッシュで背景の緑を作り、一色塗っていきます。
そこに天使や星をアクリルガッシュで若干厚めに塗っていきます。厚く塗ることで寒さの中に ほっこりとした暖かさを出す狙いです。
ポイントは、背景は最後に描いていくのではなく最初に一色画面全てに塗ってしまっていると ころです。
メリットは、
- 最初にアクリルガッシュの深い緑を置くことで、この後上から塗り重ねる天使の肌色や白、ゴールドがとても綺麗に映える点
- 下地の色があることで筆跡が重なり、絵の表情が複雑になる点
もちろんそういった表現が不要な、軽さを重要視したイラストもありますので必要に合わせて 描き方を変えることをおすすめします。
もし背景を最後に描くことがいつものパターンになっていて、なんだかしっくりこないな…と 思っている方は是非この方法を試してみてくださいね。
見る人を楽しませるような表情の絵は展示にも向いていますよ!
そしてある程度アクリル絵具を塗り重ねてまとまってきたら雪の表現に色鉛筆を使っていきま す。
これがないと動きがなくて静かすぎる絵になってしまうと思ったので、適当なように見えます が気をつけて配置していきます。
水色 → 赤でクリスマス感をアップさせます。
そして文字も入れてようやく完成です。
クリスマスっぽい筆記体と迷いましたが、生誕劇をする子供たちというストーリーが背景にあるのでほっこりした文字にしました。
だいたい完成までに5時間ほどかかりましたが、ラフ制作にかける時間よりも制作の時間は短くスピーディに描けたと思います。
きちんと計画を立てたので、本番の失敗はほとんどゼロです。
3.イラスト制作で重要な「明確なコンセプト」と「ラフスケッチ」
もちろん画面上で迷ったり、こねくり回すことで良さが出る場合もたくさんありますが、最初のぼんやりしたイメージがうまく表現できないとお悩みの方は、絵のイメージをゆっくり じっくり考えてみることでスムーズに完成させることができるかもしれません。
- 構図の検討
- キャラクターの表現
- 簡潔なスケッチでアイディアを形にする
- フィードバックの取り込み
- 迅速なラフで複数のアイディアを比較検討
このように表現したいイラストについて、ラフ制作を段階的に進めることで理解が深まり基盤が確立し、コンセプトのしっかりとしたメッセージ性のあるイラストが完成します。
4.モチーフイラスト素材の展開でイラストレーションを楽しむ
そしてこちらはおまけですが、クリスマスカードは2点作ろうと思い、もうひとつは宗教色のないものにしました。
くるみ割り人形のおもちゃの置物をモチーフにしたイラストです。
(1)透明水彩・アクリル絵具で着彩 素材を活かすイラストレーション
和紙に透明水彩・アクリルで着彩しています。和紙の特徴を活かして、ほのぼのとした暖かみ のあるイラストに仕上げました。
このおもちゃの持ち主の子どもが書いたような文字がポイントです。
これら2点のイラストをPhotoshopで色校正し、業者さんに入稿して印刷していただいたらポストカードの完成です。
(2)自分の描いたイラストでオリジナル切手をオーダー
今回は割愛致しますが、日本郵便でオリジナル切手もオーダーしました。
クリスマスカードを買っても相性の良い切手があまりないな〜と毎年悩んでいたので、いっそ のこと自分で作っちゃえ!と思ったことがきっかけです。
気軽に作れるので、みなさまに是非お勧めしたいです。
このような感じで、私が受講生さまとしっかり対話しながら狙い通りの作品を確実にひとつず つ作っていく「伝えるイラストレーション」講座と、 透明水彩やアクリルなどの絵の具の特徴を説明しながら制作を進めていく「透明水彩・アクリ ルで描くイラストレーション」講座をそれぞれご用意しております。
また、作風を問わずより説得力のある表現を目指したい方には、イラストを描く上での基礎と なる「はじめてのデッサン」講座を併用いただくのもおすすめです。
イラスト初心者の方や、どんな内容の講座を受講したらいいかわからない方も大歓迎です。
授業は完全個人カリキュラムですので、すべての要素を取り入れるような形で授業を進めている 受講者さまもいらっしゃいますよ。
誰かに絵の感想をもらったり、一緒に悩んだり、アドバイスを受けてみたい!という方は是非 講座にいらしてみてくださいね。
初めてアドバイスを受ける時は緊張するかもしれませんが、良いところをメインにどんどん伸 ばせるような授業ですのでご安心ください。
まずは一緒に楽しく作品を描いていきましょう!
5.iPadとProcreate(プロクリエイト)で描くイラストレーション
(1)Apple Pencilの豊富なブラシと感圧・傾き検出機能を活用
プロクリエイト(Procreate)はiPad対応のデジタルイラストアプリで、Apple Pencilなどの電子ペンでイラスト描画やペイントをすることができます。
Apple Pencil(アップルペンシル) は、感圧や傾き検出機能を備えており、筆圧やペンの傾きに応じてブラシの太さや不透明度を 自動的に調整出来るため、アナログ画材で描いたように自然で鮮やかな描画が可能です。
ブラ シの特性を最大限に活かし、多様な描画スタイルや効果を実現できます。
ブラシの種類が豊富で、それぞれが異なるテクスチャや質感を持っており、水彩・油彩・鉛 筆・インク・エアブラシなど、創作の幅を広げることができます。
(2)デジタルイラスト制作のためのイラストアプリ(iPad対応)
Procreate(プロクリエイト)のほかにもイラスト描画アプリやお絵かきツールは様々あり、無料であっても十分な機能が備わっているものもあります。
私が主にデジタルイラスト制作の下 書きで利用しているプロクリエイト(Procreate)のほかにもCLIP STUDIO PAINT(クリスタ) や、Adobe Fresco(アドビフレスコ)などがあります。
デジタルのイラストアプリやソフトにはレイヤーや3D等の他にも様々な便利な機能がありますが、操作が異なるために慣れる必要があります。アプリやソフトによってそれぞれの特徴と得意領域があり、適した用途で利用することにより幅広い表現が可能になります。
(3)[参考]:デジタルイラスト制作ができる主なアプリ・ソフトウェア等のサービス
Procreate | 有料 2,000円(買い切り) |
マンガ制作 |
CLIP STUDIO PAINT |
有料 月額480円~ |
イラスト・マンガ制作 |
Adobe Fresco |
無料(一部有料) |
イラスト美術 (デッサン・水彩・油彩) |