絵本の描き方(ストーリー編)
高橋禎司
「絵本を書きたいけれど、ストーリーが浮かばない」
こういう方はたくさんおられるようです。そこで今回は、絵本の「ストーリー(おはなし)」の作り方について書いていきます。
絵本にしても、童話にしても、テレビドラマでも映画でも、基本的に「ストーリー」の作り方に違いはありません。
共通しているのは「聞き手(受け手)」がいる、ということです。
「ストーリー」というのは、人に伝えるものである以上、受け手にどうしたら興味を持って、負担をかけずに、内容をうまく伝えられるか、考えてつくる必要があります。
例えば、トランプの「ババ抜き」のルールーを、あなたはどうやって説明しますか?
1参加者全員に均等にカードを配る
2参加者は同じ数字、記号の2枚の組み合わせのカードがあれば、手札から外す。
3参加者はお互いに手札が見えないようにして、順番に沿って相手の札を一枚自分の手札に加える
4手札を引いた結果同じ数字、記号の組み合わせができれば、手札から外す
53-4を繰り返し、最後に組み合わせのできないジョーカーの札を残したものが負け
ざっとこんなふうになると思います。
同じように、今度は「ももたろう」のストーリーを説明してみましょう
1昔 山の中におじいさんとおばあさんが暮らしていた
2おじいさんが山に行き、川に流れる大きな桃を見つけて持ち帰る
3桃の中から子供が出てくる
というような感じになるでしょう。
「ババ抜き」にしても「ももたろう」にしても、まず「前提」から説明しています。それがどのように展開して、最後はどうやって終わるのか、時系列で「出来事」を並べています。
今述べたことがいわゆる「起承転結」という、ストーリー作成の一つの法則です。
ストーリーが浮かばない、という方に是非試していただきたいのが、何かを作る手順を時系列に沿って書いてみることです。
ここでは、クッキーやケーキといったお菓子づくりを例にしてみます。
1ボウルに小麦粉と、卵と砂糖を入れて混ぜる
2型に流して、上に干し葡萄を載せる
3オーブンに入れる
まずは「レシピ」のようなものが出来上がるでしょう。
そこに、「誰が」「どうして」という要素を入れてみます。そのクッキーは誰が作ってるのでしょう? お母さんと女の子、それとも森のリス達? では彼女らはどうしてそれを作っているのでしょう? 誰かにプレゼント?病気のおばあさん? 森のリスたちは、クッキー屋さんでも始めるのでしょうか? 様々に想像が広がるはずです。
さてそこで、もういちど「レシピ」に戻ってみます。そして書き直してみます。ボウルをかき混ぜるのが、小さい女の子には大変かもしれません、リスなら尚更です。
そうすると、一つ一つの出来事が少しづつ変わってくるでしょう。大事なところでお母さんは出かけてしまい、女の子ひとりになるかもしれません。
リスはどうやって火を起こすのでしょうか。出来上がったものはクッキーでもケーキでもないかもしれません。
そう、出来上がったのはあなたの「ストーリー」なのです。
高橋 禎司
- Profile
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京都工芸繊維大学 工芸学部 造形工学科卒
建材メーカーでデザイン開発に従事
その後、絵画、絵本作成に取り組む
'19 有田川絵本コンクール佳作入選
'20 武井武雄記念日本童画大賞優秀賞 - Message
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絵本作りに特別な才能は必要ありません。
ただ作品を作り続けることで、今まで見えなかったものが見えるようになったり、
より深く自分の伝えたいことが、伝わるようになるようです。
そして作り続けられる人は、楽しめる人です。
人から褒められて楽しい、上達するのが楽しい、ただただ絵を描くのが、 物語を考えるのが、それだけで楽しい。どれでもいいのです。
「よく知っていてもそれを好きなものには敵わない。 それを好きでも、それを楽しんでいるものには敵わない」 論語のことばですが、何かを創作する人には特に当てはまるように思われます。
講座を通じて皆さんが「楽しめる」お手伝いができれば幸いです。 - ArtWorks