アクリル絵の具の塗る順番~ささいなテクニック1
高橋禎司「アクリル絵の具のささいなテクニック1」
- (登場人物のごしょうかい)
- T:Tちゃー アクリル絵画のことはちょっとばかり知っている。趣味は軍艦模型
P:Pくん Tちゃーといっしょに絵の勉強中。推しキャラはオーベルシュタイン
T 今日はアクリル絵の具、とくにアクリルガッシュのテクニックを紹介するで。
P いきなりですな。
T ところで、アクリルとアクリルガッシュの一番大きな違いは何やと思う?
P うーん ガッシュはツヤがないこととか。
T それもあるけど、いちばんの違いは「隠蔽(いんぺい)性」や。
P 隠蔽?
T ガッシュは白の上に赤を塗ったら赤、緑の上に白を塗ったら白、そのまた上に緑を塗ったらまた緑になるゆうことや。
P 絵の具のムダ。
T 要するに、一番最後に塗った色の発色がだけが残る、そういうことや。この性質を理解するとガッシュならではの絵の描き方ができる。
このように背景、近景、前景を、フォトショのレイヤーのように分けて描けるゆうことや。
P そやけど例えば近景や前景とかぶるとこまで背景の色塗るのはなんでなん?絵の具もったいないやん。
T うーん 例えば背景を描くときに近景前景を避けて塗ろうとすると、どうしても「避けた感」が筆使いに出てまう。勢いがなくなるし、なによりめんどくさい。
P まとめるとめんどくさいからの件。
T 背景がきれいに描けたら、その上に手前のものを、要するに近景、前景の順番でおんなじように描いてゆく。ガッシュはこれができるんや。
P でも例えば真っ黒の背景にレモンイエローのレモンを描こうとしたら、えらいどす黒いレモンになったで。
T ガッシュの隠蔽力は色によって差があるんや。レモンイエローや蛍光色系は、そのまま塗っても、なかなかその色にならへん。下の色を透かしてまう。
だから、その場合は、レモンイエローを塗る前に白を塗るんや。もしくは題を「腐ったレモン」にするのも手やな。
P 題は変えたないな。でもそのガッシュの白は透けへんのか?
T ガッシュの白、特にソフトタイプでないのは隠蔽力が強い。絵の具の形した修正液や。黒いものでも白くなる。
P たのもしいけど逆らえない感じ。
T それからこの特徴は、もう一つ別の効果もある。例えば、ある程度描き上げたとこで「この背景の木やっぱりいらんかなあ」ゆうときに、さっと一筆ガッシュのホワイト!みたいに描き上げながらいろんな検討が簡単にできる。
普通のアクリルや水彩はこうはいかない。
P 油汚れもすっきりって感じか
T とにかく何かあったら消して描き直せる、てゆうのは心理的にも絵をよくするのに役立つ。描き足すときの心理的ハードルも下がる。これは作画する上でとても大きい。
P タブレットで絵を描くみたい。
T そうやな。さすがにredoボタンで・・というわけにはいかへんけど、PCで絵を描く人はガッシュはなじみやすいかも。
P 最近はタブレットもよくなってそれで絵を描く人が増えたけど、「実物の絵も描いてみたい」っていう方にはぜひアクリルガッシュってことか
T 画材屋さんにいったらちっちゃいキャンバスが売ってるから、小物づくり感覚で描いてみても楽しいよ。
P ほんまや やってみよ。
高橋 禎司 【絵本】
- Profile
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京都工芸繊維大学 工芸学部 造形工学科卒
建材メーカーでデザイン開発に従事
その後、絵画、絵本作成に取り組む
'19 有田川絵本コンクール佳作入選
'20 武井武雄記念日本童画大賞優秀賞 - Message
- 絵本作りに特別な才能は必要ありません。
ただ作品を作り続けることで、今まで見えなかったものが見えるようになったり、
より深く自分の伝えたいことが、伝わるようになるようです。
そして作り続けられる人は、楽しめる人です。
人から褒められて楽しい、上達するのが楽しい、ただただ絵を描くのが、 物語を考えるのが、それだけで楽しい。どれでもいいのです。
「よく知っていてもそれを好きなものには敵わない。 それを好きでも、それを楽しんでいるものには敵わない」 論語のことばですが、何かを創作する人には特に当てはまるように思われます。
講座を通じて皆さんが「楽しめる」お手伝いができれば幸いです。